マスではなく、個人的な嗜好に寄せた銀行に期待

 スルガ銀行といえば、かつてユニークなインターネット支店を生み出してきた、デジタルバンキングの先駆的存在だった。銀行取引でマイルが貯まるANA支店、Tポイントが貯まるTポイント支店なども、令和になる前から手掛けてきた。

 しかし、投資不動産融資に対する不正問題、いわゆるシェアハウス問題が発覚し行政処分を受けたため、消費者向けの記事に登場することは激減していた。目下、業務改善計画による立て直しの途上にあり、十八番だったユニークなネット支店への取り組みも徐々に再開するだろう。

 かつて大手銀行はそれだけでブランドであり、黙っていてもお客が来る商売だった。しかし、DX時代に向かう今、利用者はもっとカジュアルな理由で口座を開く。銀行ブランドにかかわらず、ポイントやマイルなどの細々したメリット次第で行動を変える。

 1994年にビル・ゲイツ氏は「銀行機能は必要だが、今ある銀行は必要なくなる」と発言したそうだが、消費者は決済や送金などお金のやり取りがストレスなくできればよく、それがユニクロ銀行でもダイソー銀行でも、自分のライフスタイルに合ってさえいれば構わない。スポーツチームがチケット決済機能を丸ごと自社で持って、チケットが買えるポイントを還元してもいいし、ステータスのあるホテルチェーンが顧客向けに銀行機能を提供してもおもしろい。

 お金のやり取りが発生するところに可能性は無限にある。今後も、ニッチな銀行の出現に期待したい。