企業のポテンシャルを引き出せるデザイナーの条件とは

企業の可能性を引き出すデザインの可能性とはPhoto by ASAMI MAKURA

――従来のいわゆる職人的なデザイナーとはだいぶ異なるデザイナー像ですね。求められるスキルも拡大しています。

 世の中の仕事は皆、専門性ごとに縦割りになりがちですが、経営に関わるデザインを仕事にする人は、広範な視野と多様な視点を持つことが求められます。

 例えばデザイナーに社会科学の視点がないと、「その会社が社会に存在する意味」を考えることはできないでしょう。社会が今どうなっていて、その社会においてこの企業がどんな存在かを表現するのもCIですから。

 あるいはSDGsや世界のエネルギー問題・資源問題を知らなくては、商品開発やパッケージデザインが企業価値を左右することを理解できません。ペットボトルをデザインするとき、厚みが違えば消費するプラスチックの量が大きく変わります。それが意味することをデザイナーは知っていなくてはいけません。さらには、プラスチックを使わなければいいという話ではない、ということまで目配りが必要です。

 人々の価値観の変遷はもちろん、個人個人の心の動き、つまり心理学的な視点も必要です。つまり、知らなくていいことは何一つないのです。

 経営者の方にもビジネスパーソンの方にも、デザインは全ての物事に関わる営みであり、アイデアを具現化するという大きな効能があることを知っていただきたいですし、デザイナーの側でも、旧来のデザイナーの枠にとらわれることなく、企業自体の可能性を引き出す仕事で活躍する人が増えることを願っています。