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企業や行政機関では、とんでもない自己中な言い分でも、相手が市民や消費者であれば事を荒立てすぎずに対応することが求められます。ついさっきまで普通にしていた人が、一瞬で信じられないようなモンスターに変貌することがあるのです。今回は、私が過去に遭遇したトラブルを例に、危機に備え、不安を取り除くヒントをお伝えできればと思います。(エンゴシステム代表取締役 援川 聡)

トラブルに強い組織とは?

 トラブルに強い組織とは、どのような組織でしょうか。

 サッカーのように個々のスター選手がおのおのに活躍するのではなく、個人(プレーヤー)と組織(チーム)が有機的に結びついた「ラグビー型」なのだと私は考えます。そうしたチームはたとえトラブルがあっても、ラグビーのスクラムを組むように、相手に押し込まれないようにしながら、少しずつ相手陣地ににじりより、巻き返すことができるはずです。

 組織のメンバーが一丸となって困難を乗り越えれば、チームワークは飛躍的に向上します。仲間意識や連帯感が強まることで現場力が高まり、現場での切磋琢磨でさらに信頼関係が深まる。この好循環によって、見違えるような「やる気集団」に変身することができるのです。

 ところが実際には、個人と組織の歯車がかみ合っていないことが多いようです。私にもこんな経験があります。約20年前、クリスマス商戦の真っただ中でした。ホームレスが河原や公園などで襲撃される事件が頻発した頃のことです。

 当時、私はスーパーの本社事業本部に所属する渉外担当として、各店舗の防犯・防災をサポートしていました。クリスマス商戦を迎える時期になると、世間一般が家族だんらんでにぎやかになる一方、行き場のないホームレスは冷たい雨や寒風を避けるように、スーパーの店内にたむろすることがあります。店内で温まったり、廃棄前の食品や商品をあさったりする行為を「かわいそうだ」と黙認していると、その評判がホームレス仲間に口コミで伝わり、いつの間にか彼らのたまり場になってしまいます。