大和ハウスと飯田グループ、コロナ禍で2社の明暗が分かれた事情【決算書で比較】Photo:PIXTA

筆者の新刊『見るだけで「儲かるビジネスモデル」までわかる 決算書の比較図鑑』では、ひと目で会社の儲けの構造やビジネスモデルの違いが分かるように、さまざまな会社の決算書を図解して比較している。今回は、住宅メーカーの大和ハウス工業と飯田グループホールディングスの実際の決算書から、両社の業績の明暗を分ける要因となった戦略の違いを読み解いていこう。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

決算書を読めるようになるまでの
「2つの壁」とは?

 会社の仕事を進めていく上で、会計の知識を求められる機会が増えている。損益計算書(P/L)だけではなく、貸借対照表(B/S)やキャッシュ・フロー計算書(CF計算書)といった決算書(正式には財務諸表と呼ばれる)の知識を組み合わせて、経営の状況を把握し、次の戦略を考えるツールとして会計を使いこなすことが求められているのだ。

 投資を行う上でも、決算書は有益な情報を与えてくれる。この会社はどのようにして利益を上げてきたのか、どのようにして成長を実現してきたのかといった点を分析することによって、今後の収益性や成長性を占う材料にできるからだ。

 このように、決算書を読むことができれば役に立つことが分かっているのに、なかなか読むことができるようにならないのはなぜなのか?

 その理由の一つは、「決算書を読む面白さ」がよく分からないからだ。決算書を読む目的は、会社の本当の姿を浮かび上がらせることだ。定性的な情報だけでは分からないことが分かるようになるということは、本来とても「面白い」ことであるはずだ。

 決算書を読むことの面白さを感じるために必要なのは、「決算書を実際の会社のビジネスの実態と結びつけながら読む」ことだ。会計の数字とビジネスの現実を突き合わせて見るからこそ、両者がそれぞれ別々にあるのではなく、相互に関係し合っていることが分かり、面白いと感じることができる。そのため、架空の数字を使った設例を見ても面白くない。これでは、決算書を読む力は身につかないのだ。

 ビジネスと決算書を結びつけてその会社の本当の姿をつかむ面白さを知るためには、架空のものではなく、実際に存在する会社の決算書の事例(ケース)を使ってトレーニングすることが大切だ。

 とはいえ、決算書を読み始めた頃にたくさんの決算書を読むのは時間がかかってなかなか大変だ。決算書を読む力を高めるためには多くの会社の決算書を読むことが有効なのだが、1社1社の決算書を読み込むのに時間がかかるため、なかなか先に進まなくて嫌になってしまうのだ。

 決算書を読む面白さが分からない、というのが決算書を読む力をつける際に挫折してしまう第一のチェックポイントだとすれば、読むのに時間がかかって嫌になってしまうというのが、第二のチェックポイントだといえるだろう。