即断即決できるように常に自分と向き合い続ける
――著書にも、「リーダーは現場の人たちの期待に応えることが大事な仕事だ」とあります。
中野 リーダーだからといって、必要以上に周りの合意を得ようとしたり、組織をまとめようとする人がいますが、結果的には中途半端になってしまうと思います。
リーダーになるということは、用意した神輿(みこし)に乗っかって踊るようなもの。ただし、乗せてもらうための努力はするべきですが。神輿に乗っている間は、支えてくれる人たちの期待に応えて、失敗したら神輿から降りる覚悟でやればいいんです。
リーダーの評価も、神輿に乗せられた後、力強く美しいさばきに対していただけるお賽銭のようなものです。だから僕は、会社と契約するとき「報酬は後で決めてほしい」とお願いすることがほとんどですね。
――周りの期待に応えるスピーディな判断力は、どのようにして身につけたのでしょうか。
中野 自分では意識したことないですけれど、僕は両親と暮らしたことがないので、子どもの頃から何でも「どうすればいいんだろう?」と独りで考える時間がたびたびありました。
物事を深く考えるヒントになったのは、僕を育ててくれた祖父母の家にあった児童文学全集です。歴史や物語には先人の知恵あふれているように思います。
小学3、4年生のときには、本を読みたくて自分で漢字の勉強をして覚えました。定期購読していた世界史や日本史の子ども向けシリーズも心待ちにしていて、送られてきたら読み終わるまで寝られなかった。だいたい一晩で読み終わっていたくらいです。
――お祖母様が生け花の先生で、よくお手伝いもしていたそうですね。
中野 祖母は、生徒さんが来る前にお花の準備をしていました。それで、10人分くらいのお花がずらっと並んでいるところに呼ばれて「ねえ、手伝ってくれる?」と言われたりしながら。
祖母と生徒さんがやりとりしているのを横で見て、「へえ、そうやるんだ」「自分だったらこうするな」なんて、想像力を働かせていました。
周りの大人の言動をいつも注意深く観察していたので、自然に自分で考える癖がついたのだと思います。