日本の賃金上昇のカギは、「GAFA欠如論」ではなく
「PCR検査目詰まり論」

 私は、日本の賃金が上がらない理由として、おそらく多くの人が信じている「GAFA欠如論」ではなくて、「PCR検査目詰まり論」を提唱したい。日本の感染症学者はPCR検査の拡大に一貫して反対していた。安倍首相(当時)がPCR検査を拡大しろと指示しても増加せず、首相自らこの状況をPCR検査の「目詰まり」と説明した(『増えないPCR検査 安倍首相が旗振れど、現場は改善せず』東京新聞2020/7/29)。

 なぜPCR検査が増えないのか私は分からなかったが、PCR検査を手作業でする姿と自動検査機でする姿の映像を見て理解できた(『日本生まれ「全自動PCR」装置、世界で大活躍 なぜ日本で使われず?』TBS NEWS23 2020/6/29)。

 複雑な検査を手作業ですれば急に検査数を増やすことはできない。人を訓練して間違いのないようにしなければ、無用の混乱が起きるため、急には検査数を増やせないのだ。しかし、機械で行えば熟練者は必要なく、いくらでも検査できる。自動検査機の生産性は人手でする場合の100倍を上回るだろう。しかし、感染症学者も厚生労働省も、なぜか機械の導入に熱心でなく、機械が手作業と同等の精度を持つかをチェックすることに時間をかけ、導入を遅らせた。そもそも、この自動検査機は日本製で、全世界で使われている。世界中で性能をチェックしているのだから、厚生労働省がチェックしなくても大丈夫に決まっているように思えるのだが。

 ここから、日本の生産性が低い理由が理解できる。ありとあらゆるところで、このような自動化機械あるいはコンピュータによる手作業の合理化に反対する人々がいるのではないだろうか。これでは、日本の生産性は上がらない。

 韓国は、コロナ感染の広がりとともにすぐさま自動機械で大量の検査を行った。熟練の技などに拘泥しない。検査の生産性は日本の100倍以上あるのではないだろうか。韓国では、ありとあらゆるところでこのような生産性の向上が実現している。だから、全体として生産性が上がり、賃金は上昇し、日本を追い抜いた。もちろん、他の国も同様である。きっと、自動化機械に反対する人はおらず、反対する人は退場させてしまうのだろう。日本では、さまざまな分野での生産性向上に反対する人々が、生産性向上の目詰まりを起こさせてしまうのではないかと考えている。

「GAFAがないから日本はダメだ」と言っても仕方がない。イタリアを除けば、GAFAのない国でも給料は上がっている。イタリアにも、日本と同じように、あらゆる場所に生産性の向上を邪魔する組織があるのかもしれない。賃金を上げるためには、生産性の向上を邪魔する人々にはご遠慮いただくより仕方がない。これは、GAFAを生むよりも簡単なはずである。

 生産性の向上を邪魔する人々がいなくなれば、日本版GAFAが自然と生まれてくるかもしれない。