実際にご覧になった方もいるだろう。車両基地がいくつか設置されていた築地~月島近辺や大会本部やメディアセンターが置かれていた有明~お台場周辺では頻繁に見かけることができた。なお、大会運営車両と銘打って販売する場合、組織委員会との約束で「ラッピングはそのまま」が条件となるが、ユーザーが購入後にはがすことは何の問題もない。

 いくつかの販売店に尋ねたところ、ラッピングをはがして白い素の状態のボディーにするための専門業者を紹介してくれるところもあり、はがした状態にするか、そのままの状態かで価格設定を変えている販売店もあった。

 ちなみにはがす費用は車種や地域によっても異なるが2万~3万円が相場とのこと。赤い部分だけをはがしてボンネットの『TOKYO 2020』の文字だけを残したいといった要望にもこたえてくれるという(費用が安くなる場合もある)。

 魅力の多いオリパラ使用車ではあるが、トヨタ自動車では転売されないように業者への販売を固く禁じている。必ず購入者本人に現車を確認してもらい、対面で販売すること。また、支払いは現金ではなくローンでの購入のみとしている。

 北関東のあるトヨタディーラーの話によると、五輪中古車は非常に人気が高く、入札形式で全国各地のトヨタ販売店が参加し、激しい争奪戦が繰り広げられていたという。

「スタートした当初はそれほどでもなかったのですが、回を追うごとに仕入れが難しくなっていきました。とはいえ、新車の納車が遅れ気味である現在、新車同様の状態ですぐに納車できる中古車の存在はとてもありがたいです」(ディーラー)

 なお、11月に入り、パラリンピックで使用されたノアやヴォクシーの福祉車両(車椅子のまま乗り込めるなどの改造が施されている)が市場に出てくる。福祉車両が中古車市場に出てくる機会はそれほど多くはないため、こちらも人気が集中しそうだ。

(自動車生活ジャーナリスト・加藤久美子)

※週刊朝日オンライン限定記事

AERA dot.より転載