11月11日の衆院本会議場でのことだ。自民党の新しい幹事長に就任した茂木敏充が前国対委員長の森山〓(もりやま・ひろし、〓はしめすへんに谷)の席にやって来て、突然話し掛けた。
「実は今日いいことがあったんです。平成研(自民党竹下派)の会長に内定しました」
森山といえば、安倍晋三、菅義偉という二つの政権の国対委員長を務めた、今や数少ない実力政治家の一人。前幹事長の二階俊博とは強い信頼関係で結ばれている。茂木にとって気になる存在であることは間違いない。それだけではない。森山は今なお竹下派に隠然たる影響力を持つ元自民党参院議員会長の青木幹雄にも近い。このことの方が茂木にとって意味があったのではないか。茂木の「会長内定」に至る過程の不透明さに、茂木自身が後ろめたさを感じていた可能性は否定できない。
竹下派の総会が開かれた前日の10日は青木が週に1回だけ事務所に姿を見せる水曜日。この日も千客万来だった。最初の来客は元幹事長の石原伸晃。石原はこの後開かれた石原派総会で、自らの衆院選の落選を受けて石原派会長を辞任することを表明した。
石原に次いで青木を訪ねたのは自民党参院幹事長の世耕弘成、幹事長経験者の古賀誠、石破茂。そして青木の長男で参院議員の一彦と、茂木の下で引き続き幹事長代理を務める石井準一が青木と昼食を共にした。この日は在任期間が1カ月にすぎなかった甘利明に代わって茂木が幹事長になって初めての水曜日でもあった。青木は怒りに震えていた。