また、そもそも「お金」「金融」は公共性の高いシステムなので、その管理のために取引・残高などのデータが漏れなく集約できるような管理システムがあるのは良いことだろう。国レベルで脱税を減らすためにも、金融システムをより便利に管理するためにも、全ての金融口座とマイナンバーを結び付けることが望ましいと筆者は考えている。

マイナンバーの問題点は
国民が安心できない「曖昧な規定」

 問題は、その際のデータ利用目的の明確化とその保証、さらにデータ管理の安全性と責任について、国民が安心できるような具体的な規定がなされていないことだ。

 例えば、公務員がマイナンバーから得られたデータを目的外に利用したり、外部にこっそり売ったりした場合に、その公務員がどのような罰則を受けるのか。生じた被害に対する賠償がどうなされるのか。こういった点が、明確に伝えられているようには思えない。自分のデータをマイナンバーにリンクさせて提供するに当たって、これでは安心できないと思う国民が少なくないのではないか。

 将来、不適切な事例が起こってかつ露見した場合、刑法、民法など諸々の法律が適用されて罰則や賠償は生じ得るのだろう。しかし、そのような曖昧な条件では、政府とマイナンバーを信用しきれない国民が多いのではないだろうか。

 マイナンバーを普及させてかつ有効に利用するためには、マイナポイントで登録者を増やして後に同調圧力で普及を図るよりも、データの利用に関して政府(と公務員)自身にとって厳しい規定を発表することが効果的ではないだろうか。

 十分に厳しい規定を作った後なら、省庁をまたぐデータの利用があってもいいし、全ての金融口座のマイナンバー登録が義務であってもいいと思う。

 デジタル後進国を脱するためにも、マイナンバーは有効に活用したい。

訂正 記事初出時より以下の通り訂正します。
1、3段落目:銀行口座→銀行口座(公金受取口座)
1段落目:「公金受取口座の登録はまだできないようだが、擬似的に通常の銀行口座とマイナンバーをひも付けることで、2万円相当付与の3条件を実際にやってみた。」を加筆
16〜17段落目:銀行口座とマイナンバーのひも付けについては少々考えた。→銀行口座(公金受取口座)とマイナンバーのひも付けについては、22年度中に運用開始になるという。そこで疑似的に通常の銀行口座とマイナンバーのひも付けを試みた。これについては少々考えた。
23段落目と24段落目の間に以下を加筆:なお、実際の公金受取口座とマイナンバーのひも付けでは、そのことで政府に預金残高などの情報が知られることはないという。また、税務調査等の法令に基づく場合を除いて、預貯金口座の残高や取引記録などが確認されることもないと説明されている。
(2021年12月13日14:04 ダイヤモンド編集部)