“赤短”の資産を積極活用して進化した「山脇学園」の目指すもの(1)(2)さまざまなタイプの教室があるリベラルアーツアイランド(LI)では、探究的学習の授業なども行われる  写真(2)提供:山脇学園女子中学校・高等学校  (3)(4)富士山に関する個人発表ポスターは、中学3年「探究基礎」の研究成果
拡大画像表示

第三の島、リベラルアーツアイランド

――校庭よりもだいぶ低いところに、屋外実験場の田んぼや畑があるのには驚きました。目の前にはTBS本社やタワーマンションが見えます。

鎗田 5号館前のSIのフィールドワークエリアには、ビオトープや田んぼ、畑があります。野菜やサツマイモを作っていた畑はコロナ禍のため9月まで休耕していましたが、10月から技術の授業で秋野菜を作り始めました。

 担当の先生が偉いなと思ったのは、実ったコメを雀がだいぶ食べてしまったのですが、そのことを生徒には言わず、収穫のときに気付かせたことでしょう。今後は、太陽光発電パネルなども設置して、IoT農業を試みたいと考えています。

“赤短”の資産を積極活用して進化した「山脇学園」の目指すもの田んぼを見守るかかしの美々子(びびこ)ちゃんは、美術部のメンバーの手による。今季の役割は終えて現在は室内に

――ここからが、三つ目のリベラルアーツアイランド(LI)ですね。5教科のうち、EIは英語、SIは理科と数学で、残る国語と社会をLIというわけですね。

鎗田 SIとEIをつくった2年後、5号館にリベラルアーツアイランド(LI)もできました。たくさんある教室にホワイトボードやプロジェクターを配置して、議論する場所として活用しています。

 中学1・2年が国語科の「知の技法」、中学3年の「探究基礎」では2021年現在、社会や理科とのコラボも行っています。EIやSIも絡む社会問題などの探究的な学習やグループディスカッション、模擬裁判などでも利用されています。

西川 三つのアイランドは、生徒の表現する場でもあります。議論・発表の場は年間を通じてさまざまありますから、生徒たちはだいぶ鍛えられてきたと思います。“伝える” “表現する”という、これからますます実社会で必要になっていくスキルをしっかり身に付けてほしいですね。

鎗田 遅ればせながら、今年度からロイロノートというアプリを用いて、各人が持っているiPadで瞬時に意見共有もできるようになりました。

 音楽室などのある6号館を出ると、高校の職員室もある1号館に着きます。これで校内を1周しました。

――短大の施設を利用することで教室の数も増えましたし、この学校にはパワーを感じます。しかし、1学年280人は本当に多いと思います。その分、先生方の数も多いですが。

鎗田 少子化が進む中、その点をどうするかが今後の大きな課題です。さまざまな志を持つ生徒のために、入試の形態を増やしているのもその対策の一つです。

西川 10年先を見ながら、いま、学校として何を目指すべきかを共有しつつ、「改革」というよりも、「一緒に進化しましょう」と、私は呼びかけています。これからの女性が社会で活躍するのに必要な力の育成を、保護者も期待していると感じます。例えば、データサイエンス分野などもその一つです。

 22年には、SIでの実績を高校生から大学進学までつなげていけるような、サイエンスクラスを立ち上げます。1クラス40人に対して、希望者がすでに80人います。

 また、データサイエンスの導入に向けて、中学3年の「探究基礎」の授業では、全員がエクセルによる統計処理を学んでいこう、高校の「総合的な探究の時間」には、人文社会分野でもデータ利用をする授業を行おう、といったことも考えています。これからの本校の進化に、ぜひご期待いただければと思います。

“赤短”の資産を積極活用して進化した「山脇学園」の目指すもの入学式や始業式などの折に開かれる「志の門」は、2016年に移築された老中屋敷の門。東京大学本郷キャンパスの赤門(加賀藩前田家)、東京国立博物館の黒門(因州池田家)と並び称される江戸時代の武家屋敷門(国指定重要文化財)