プロスポーツ選手以上に「プロゲーマー」の寿命はさらに短い。年を取れば取るほど、栄光を手にするチャンスは遠ざかる。中国では、eスポーツ黎明期の支持層となった1980年代や90年代生まれは、すでに家庭や仕事を持つ世代となっている。eスポーツを支える中心世代は2000年代生まれにシフトする中で、現在18歳となる2003年生まれまでは「ゲームは週末の1日1時間しかできない」といった状況にあるのだ。
一方、保護者や学校側の立場からすれば、未成年者のゲーム中毒も頭の痛い問題だ。学業への支障を重くみる国家が今後さらに介入してくる可能性がある。
それでも前述の劉さんは前向きだ。
「世界のサッカーチームがそうであるように、中国チームは各国のプロゲーマーを招聘して、国際色豊かなチームを編成しながら発展することも不可能ではないと思います」と語っている。
若者たちが見せた「狂喜乱舞ぶり」が意味するもの
本稿で注目したいのが、彼らの「狂喜乱舞ぶり」である。
中国の視聴者が投稿した多くの動画には、LoL世界大会の決勝戦を、映画館や劇場などのホールで視聴する若者や、商業施設に特設されたパブリックビューイングを前にすし詰めになりながらも夢中で観戦する若者が映し出されていた。
ある者は自宅で、ある者は学校の寄宿舎で、ある者は商業施設で…。同じ時間帯に配信される実況中継を中国各地で若者が見守った。彼らは「祖国の勝利」への渇望で非常に強い連帯感を見せていた。
中国代表チームの優勝が確定したその瞬間、中国全土で若者たちが狂喜乱舞した。3度目の世界制覇だったが、前半戦は諦めムードが強かっただけに、後半戦の“奇跡”の到来に、視聴者の誰もが興奮を抑えきれなかったようだ。
中国の若者はその喜びを、中国代表チームの旗である「EDG」のロゴ入りの旗を戸外で振りかざしながら発散させた。YouTubeに投稿された動画からは、かつて見せたことのない中国の若者の激しい興奮ぶりがうかがえる。
ある者は窓から飛び出し裸足で駆け回った。電動キックボードに乗りながらEDGの旗をたなびかせる者もいれば、EDGの旗を手にバイクで隊列を組んで雄たけびを上げる者もいた。「証券時報ネット」は、「EDG旗の背後にあるのは、恐るべき数のファンたちだ」と報じたが、中国のeスポーツチームは、今や中国の若者を億単位で動員するカリスマ的存在となったことがうかがえる。