11月8日の「新型インフルエンザ等対策推進会議 第10回新型コロナウイルス感染症対策分科会」の議論を踏まえて、12日の「新型コロナウイルス感染症対策本部(第80回)」で、第6波に備えるための「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」が示された。

 そして、19日の閣議決定で、「ワクチン接種の促進、検査の環境整備、治療薬の確保」をするために、「健康上の理由等によりワクチン接種を受けられない者を対象として、社会経済活動を行う際のPCR・抗原定性等検査を来年3月末まで予約不要、無料とできるように支援を行い、ワクチン・検査パッケージ等の定着を図り、また、感染拡大の傾向が見られる場合に、都道府県の判断により、ワクチン接種者を含め感染の不安がある無症状者に対し、検査を無料とできるように支援を行う」と予算化されることになったのだ。

 この閣議決定により、今後は無料検査のハードルが引き下げられ、PCR検査や抗原検査を無料で受けられる人の範囲が広げられる。

 前述のように、これまでは医師や保健所が検査の必要があると認めた人しか、無料で検査を受けられなかった。だが、今後は「健康上の理由などによってワクチンを接種できない人」も対象になる。

 たとえば、アレルギーがあってワクチンを接種できないといった人が、「コンサートに行くために陰性証明がほしい」「仕事で海外に行く」など、社会経済活動に必要な場合は、無症状でも検査が受けられるようになる。また、今後、感染の拡大局面では、都道府県の判断によって、無症状でも感染の不安がある人は無料で検査を受けられるようにする。ワクチン接種が進んでいなかった状態で、無症状者にもやみくもに検査対象を広げることは、これまでさまざまな自治体が試みたものの感染抑制には効果を上げておらず、偽陽性・偽陰性の問題を起こす等の問題もあった。だが、ワクチン接種率が高まり感染状況が落ち着いた今であれば、こうした施策も効果があるとの判断だろう。

 これらの検査は、新型コロナウイルス感染症の症状がある人が受診する発熱外来とは別の検査場で行われ、無料期間は来年3月末までの予定となっている。だが、新型コロナウイルス感染症に関する国の支援策は、当初の予定期間が終了しても、状況に応じて延長・継続が繰り返されており、検査の無料措置も感染状況によっては継続される可能性もある。

 11月22日現在、日本国内の新型コロナウイルス感染症の新規感染者は50人、重症者は62人で、いずれも2桁まで減少した。国内の感染状況は落ち着きを見せているが、アメリカや欧州、韓国など、世界の国々では、感染が再び拡大傾向にあり、予断を許さない状況だ。

 日本も再び、この夏の第5波のような感染爆発に見舞われれば、社会経済活動の正常化を望むことは難しくなる。ワクチンの接種率(2回目)は76.2%まで増加したが、感染を広げないためには、今後も、一人一人の感染対策が重要だ。新たに始まる無料検査も活用して、感染対策に役立てたい。