冒頭のエンジニアの面接の見方を変えると、評価は様変わり

 冒頭で紹介した「とんでもない面接官に遭遇した」というエピソードですが、遭遇した面接官は確かにただの態度の悪い中年管理職だったのかもしれません。しかしひょっとすると、採用候補者の適性をチェックするための演技だった可能性も半々ぐらいであるかもしれないケースだと私は思いました。

 中途入社したら自分の上司となるかもしれない面接官で、あいさつも自己紹介もなしに履歴書に目を落として「早い話が素人で、この業界について何も分かってない」と挑発する…。冒頭の記事では、応募者のエンジニアはその会社に入社しない意思を固め、面接官にピシャリとやって、人事担当者に丁寧にお断りの連絡を入れています。

 もしこれが単なる嫌な中年管理職面接官ではなく、意図があって設計された面接プログラムだったとしたら?

 「職場に嫌な人がいるだけで一緒には仕事ができない社員」や「取引先の理不尽な要求に暴発してより事態を悪化させる社員」を雇わないために用意された踏み絵だったとしたら?

 その場合には冒頭のエピソードの見え方は変わってきます。

 私が30年以上携わってきたコンサルティングの現場では、コンサルタントのことを「早い話が素人で、この業界について何も分かっていない」と挑発するクライアント企業幹部と何回も遭遇します。冷静にそういった相手とコミュニケーションを重ねながら粘り強く信頼を勝ち得て、関係を変えていくスキルがコンサルタントには求められます。

 結局のところ当事者ではないので、冒頭のエピソードの裏にあった真実は想像するしかありません。しかし世の中にはこういった裏事情があるものだということも、ビジネスパーソンとして知っておいて損はないと私は思います。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)