何歳までこの会社で働くのか? 退職金はどうもらうのか? 定年後も会社員として働くか、独立して働くか? 年金を何歳から受け取るか? 住まいはどうするのか? 定年が見えてくるに従い、自分で決断しないといけないことが増えてきます。
会社も役所も通り一遍のことは教えてくれても、“あなた自身”がどう決断すれば一番トクになるのかまでは、教えてくれません。税や社会保険制度の仕組みは、知らない人が損をするようにできています。
定年前後に気を付けるべき「落とし穴」や、知っているとトクする「裏ワザ」を紹介し、7刷となっている話題の書「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」から、一部を抜粋して紹介します。本書の裏ワザを実行するのとしないのとでは、総額1000万円以上も「手取り」が変わってくることも!
専業主婦の「預金」には要注意
以前の記事で、定年前後は親と相続の話をするのにちょうどよいタイミングだとお話しました。
親御さん世代のご夫婦なら、奥さんが専業主婦という方も多いと思いますが専業主婦が多額の預金を持っている場合、気をつけていただきたいことがあります。
実は、「妻の預金が夫の相続財産になることがある」のです。それを知らず大変な目にあった人はたくさんいるのではないでしょうか。
大変な目にあうのは、往々にして相続税の調査の時です。税務調査で税務署が見たがるのが、この「妻名義になっている夫の預金」=通称「名義預金」なのです。
夫から家計費をもらい、使い切れなかった分を妻名義の預金にため込んでいるような場合、この預金は夫の財産として相続税の対象になる、というのが税務署の考え方です。
この感覚、理解しがたいですよね。「がんばってやりくりして貯めた私の預金がなんで夫のものなのよ!」と文句を言いたいところですが、税務署はそうは思ってくれません。
普通の人は、妻名義の預金が夫の相続財産になるなんて思いもしませんから、税務調査で見つけ出せれば、追加財産とすることができるというわけです。
もちろん、妻が稼いだお金や妻の実家から相続でもらったものなど、妻本人のものであることが明確な分については、夫の財産になるようなことはありません。問題になるのは、夫から渡された家計費などで使い切れずに残っている分です。税務署としては、これは妻の名義になっているが、夫が稼いできた夫のお金であると考えるのです。
へそくりを妻の財産にするためには
これを夫の財産とみなされないようにする方法はあります。一番いいのは、夫から渡された家計費は使い切ってしまうこと。夫婦はお互いに扶養の義務がありますので、生活費をどちらかが負担しても贈与などと言われることはありません。
夫からの高い生活費を使い切っても、ヨーロッパ一周旅行の数百万円を夫が負担していても、贈与と言われることはありません。とはいえ、妻も長い老後を考えると、もらった有り金を使い切ってしまうのは危険かもしれません。
それならば、しっかりと夫から「贈与」されたと明らかにしておきましょう。
生活費が余った分は、夫から妻にあげるという約束をして、それを証明するために契約書を作っておくのです。そして、もし年間110万円を超えたなら、贈与税の申告をします。こうしておけば、贈与の証拠が残せますから、へそくりは晴れて奥様のものというわけです。
「定年前後のお金の正解」では、定年前後のこのタイミングで、話し合っておくべき相続のことや、打つべき手を紹介しています。ぜひ参考にしてください。