何歳までこの会社で働くのか? 退職金はどうもらうのか? 定年後も会社員として働くか、独立して働くか? 年金を何歳から受け取るか? 住まいはどうするのか? 定年が見えてくるに従い、自分で決断しないといけないことが増えてきます。
会社も役所も通り一遍のことは教えてくれても、“あなた自身”がどう決断すれば一番トクになるのかまでは、教えてくれません。税や社会保険制度の仕組みは、知らない人が損をするようにできています。
定年前後に気を付けるべき「落とし穴」や、知っているとトクする「裏ワザ」を紹介し、7刷となっている話題の書「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」から、一部を抜粋して紹介します。本書の裏ワザを実行するのとしないのとでは、総額1000万円以上も「手取り」が変わってくることも!

株が暴落したら、「生前贈与」のチャンス到来!

現金以外でも、生前贈与はできる!

 以前の記事で、定年前後は親と相続の話をするのにちょうどよいタイミングだとお話しました。

 相続対策の中でも生前贈与は最もメジャーなものだと思いますが、贈与というと、「現金をあげる、もらう」というイメージを持っている方も多いと思います。しかし、実は、現金以外のものでも、価値のあるものをもらえば贈与税の対象となります。

 時々売れっ子ホステスさんが「お客様から高級バッグや高級腕時計、はたまたマンションをもらっちゃいました~」などという自慢話をするのを耳にすることがありますが、そんな高価なものをもらったら紛れもなく贈与税を払わなければならないわけで、税務署の方もばっちり高い贈与税を徴収していただきたいと思います。と余談はさておき……。

現金以外でも、生前贈与はできる!

「生前贈与」は最も簡単で効果の高い相続税対策で、中でも現金の贈与は、①手間がかからず ②費用もかからない ③価額もはっきりしている ④細かく贈与することができる などの理由で一番簡単ではあります。

 家や土地など不動産の贈与だと、名義変更するために所有権移転登記が必要で、そうなると手間もかかるし費用もかかります。また、不動産の価額をどう評価するのかを決めるのも大変ですし、切り刻んで分けることも難しいので、年間110万円の非課税枠の中におさめて贈与するのも大変です。

 それに比べて「上場株」は、現金に比べれば、手間と費用はちょっぴりかかりますが、タイミングとやり方によっては、現金よりもトクになることがあります。

 例えば株で110万円の非課税の範囲内で贈与する時に、A社の株が1株1100円から550円に暴落した場合、暴落前だと、1000株しか贈与できないところを、暴落後なら、2000株贈与できます。このように、株の暴落時は「贈与のチャンス!」なのです。

株の評価額は、過去3か月の終値平均の最も安いところになる

 しかも、上場株式の評価額は、贈与をした日とその直近3か月の平均株価(月ごとの終値平均)の中から一番低い株価で評価することになっています(終値とは、その株の1日の最後の価格をいいます)。

 過去の終値平均はすでにわかっているので、評価額が110万円以下になるよう計画的に銘柄を選んだり、贈与する株数を調整することもできます。また、相場がいったん大きく下がる月があれば、その後に高値圏まで持ち直したとしても、翌々月までは低い評価の株価で贈与することができるのです。

 株の贈与をするには、贈与される側が、贈与する人と同じ証券会社に口座を持つ必要があります。

 実際に贈与で株を動かすためには、営業マンかカスタマーセンターに連絡をして手続きをしてもらいます。通常、贈与をする時には、銘柄ごとに数千円の手数料(上限1万円程度)がかかりますので、詳しくは証券会社にお問い合わせください。
 
「定年前後のお金の正解」では、定年前後のこのタイミングで、話し合っておくべき相続のことや、打つべき手を紹介しています。ぜひ参考にしてください。