総額2兆円、国民ひとりあたり1万2千円の定額給付金が迷走している。

 きのう(1月7日)の参議院本会議での野党各党の代表質問でも給付金支給を巡る政府の対応に批判が集中した。前日(6日)には鳩山由紀夫民主党幹事長も定額給付金の即時撤回、2兆円の別の使途を求めている。

〈究極の大愚策と言われている定額給付金の問題を取り上げました。効果も乏しく、国民のみなさんが望んでもいないバラマキに2兆円を使うならば、そのお金で失業対策や中小企業対策に、また母子世帯やお年寄りを中心に、医療や介護などの社会保障の充実に充てればよいではないかと提案しました。今からでも定額給付金を第二次補正予算から切り離すつもりはないかと、総理の良心に問いかけたのですが、麻生総理は「定額給付金は経済効果もあるのだ。切り離すことは考えない」と、ゼロ回答でした〉(鳩山由紀夫メールマガジン/1月7日・380号)

 野党だけではない。与党からも厳しい声が上がっている。象徴的な動きが渡辺喜美元行革担当大臣だ。麻生首相へ給付金の撤回を求める「要望書」を提出し、受け入れられない場合は離党も辞さないと宣言したのだ。自身のHPでも「麻生総裁へ物申す」として、次のように書いている。

〈昨年10月に立案された定額給付金は、その後の派遣切り・パート切りなど雇用情勢の急激な悪化の中で「生活防衛」としてのメリハリは更に失われてしまった。「同じ2兆円を使うならもっとましな使い方があるだろう」「具体的な金の使い方は地方にまかせるべきだ」という巷の声に麻生総理は耳を傾けるべきである。(中略)定額給付金を撤回し、2兆円を地方による緊急弱者対策に振り向けるなど、2次補正予算案の修正を国会において行なうべきである〉

 鳩山幹事長がそのメルマガでも触れた通り、麻生首相に給付金撤回の意思はない。それも当然だろう。そもそも、第二次補正予算の成立は、麻生内閣の2年越しの「公約」であり、さらに永田町的に言えば、提出後の予算案を政府自ら修正するというのは前代未聞のことなのだ。したがって、麻生首相は、自らの意思で法案を撤回しないというよりも、撤回できないという方が正確かもしれない。

 また、定額給付金については、すでに政府の対応、とりわけ首相のそれはブレまくっている。この期に及んでの変更は、政権の弱体化をさらに進め、それを世に知らしめてしまう可能性もある。