薬剤師31万人 薬局6万店の大淘汰#3Photo:kokouu/gettyimages,PIXTA

学生の質の維持に課題がある大学が存在する――。将来薬剤師は最大12.6万人過剰になるとの予測をまとめた厚生労働省の有識者会議は、増殖した私立大学の薬学部にも警鐘を鳴らした。国家試験合格率の低迷に定員割れや留年。課題を抱える薬学部の淘汰は必至だ。特集『薬剤師31万人 薬局6万店の大淘汰』(全13回)の#3では、55の私立大薬学部の「淘汰危険度」ランキングを作成し、生き残る大学の条件を探った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

「学生の質の維持に課題がある大学が存在」
厚労省の検討会が薬学部の“淘汰”を提言

「同級生は300人強いたけれど、ストレートで薬剤師になれたのは80人強と4人に1人しかいなかった。公表されている国家試験の合格率よりも低いのは、留年する学生がいるからだ。諦めて退学する学生も多かった」

 ある有名私立大学薬学部出身の若手薬剤師は、母校の実態をこう明かす。

 2045年に薬剤師は最大で12.6万人過剰になるとの予測を公表した厚生労働省の有識者会議「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」。そこでは、薬剤師を育てる薬学部にも厳しい視線が注がれた。

 薬学部の6年制が始まる前だった02年度の薬学部の定員は8200人。これが20年度は1万1602人と、約1.4倍に増加した。

 検討会は、「学生の質の維持に課題がある大学が存在する」と指摘した上で、今後人口減少により進学する学生の数が減ると予想されることから、「入学定員数の抑制も含め教育の質の向上に資する、適正な定員規模の在り方や仕組みなどを早急に検討し、対応策を実行すべきである」と提言した。要するに、駄目な薬学部は淘汰すべきだと踏み込んだのだ。

 検討会では私立大の薬学部を中心に国家試験の合格率などさまざまな懸念点が俎上に載せられた。

 今後、淘汰される薬学部はどこか。ダイヤモンド編集部は検討会で指摘された三つの指標を基に、55の私立大薬学部を対象に、「淘汰危険度」ランキングを作成した。