コロナ禍での「非常識な選挙」という一部批判を受けながら、日本医師会の会長に中川俊男氏が初当選した。政府与党にも遠慮なく苦言を述べる“物言う医師会会長”の登場に、医療業界関係者の警戒レベルは最大になっている。特集『コロナが映す医療の闇』(全14回)の#04は、新会長が今後もたらすであろう、医療界各所への波紋を予測する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
伝説の「ケンカ太郎」だった第11代会長、
第20代の新会長はその再来となるか
医療界のステークホルダーたちが今、固唾をのんでその言動に細心の注意を払う人物がいる。国内の医者約17万人が入会する学術専門団体、日本医師会の第20代会長に就任した中川俊男氏である。中川氏は6月末の会長選挙で、安倍晋三首相や麻生太郎財務相に近いとされる調整型の横倉義武会長(当時)を「191票対174票」の僅差で破り、初当選した。
この新会長が、伝説の「ケンカ太郎」の再来となるかもしれないというのだ。
かつてケンカ太郎の異名を取ったのは、25年もの長期にわたって陣頭指揮を執った第11代会長の武見太郎氏(1983年死去)である。当時の医師会は選挙時の集票力と武見氏自身の閨閥によって絶大な政治力を誇った。71年の全国保険医ストライキなど、政府や厚生省(現厚生労働省)と徹底的な闘いを展開し、武見氏は医療界で伝説の人となった。
政策通で舌鋒鋭い中川氏のこれまでの言動は、そのケンカ太郎に負けず劣らず、激しいものがあった。