フードデリバリー業界が
抱える課題

 コロナ禍でデリバリーサービスが普及したとはいえ、競争が過熱しているのも事実だ。2021年6月にはNTTドコモのdデリバリーがサービスを終了。また、日本に参入している海外企業も、2021年11月には、アメリカ大手のDoordashが、フィンランドのWoltを買収するという報道もあった。

「業界全体の伸び率も、コロナの感染拡大が収まり始めた2020年秋頃から、やや落ち着き気味になっています。いまやフードデリバリー業界は群雄割拠の時代で、今後は力のないサービスはどんどん淘汰されていくはずです」

 生き残りをかけた戦略が求められるフードデリバリー業界だが、現状で挙げられる課題の一つに、“配達員の質”がある。昨年の春にICT総研が発表した「2021年 フードデリバリーサービス利用動向調査」によると、利用者満足度の上位3位は、ドミノ・ピザ、ピザーラ、ピザハットと、ピザ系の直営店によるデリバリーサービスが独占している。

 デリバリー代行サービス業界の2強と呼ばれるウーバーイーツと出前館は、共に直営デリバリー3社の満足度には達していない。

「この差は、教育体制がきちんとしているかどうかです。ピザチェーンのように、店舗が自前で配達員を雇っている場合は、ドアホンの鳴らし方から指導する例もあるそうです。一方、ウーバーイーツなど、単発の仕事を請け負うギグワーカーによるデリバリー代行サービスでは、配達時の挨拶やマナーを指導することはほぼないはず。接客時の対応は、配達員一人一人の良識に任せるしかありません」

 街中で配達員の姿を見ると、たいてい店やデリバリーサービスのロゴが配達用リュックなどに入っている。このロゴの持つ意味も、直営かデリバリー代行サービスかで大きく変わるという。

「自店のデリバリーの場合、配達ユニホームなどに店名が入っているため、問題を起こしたら店の信用に傷がつきます。一方、ウーバーイーツなどのデリバリー代行サービスでは、注文が入った店舗がどこなのか、外部の人間が特定することはできません。何かあっても提携先の店舗への影響はないため、自店のデリバリーとは責任の大きさがまるで違うのです」

 また、コロナ禍で新たに参入したデリバリーサービスが増えたことで、注文する側からすると、「どのサービスを選べばいいのかわからない」と感じてしまうのも課題の一つだ。

「配達時間の短縮や従業員の教育、料理を温かいままこぼさずに運ぶ、というのは、受け取る側にすれば当たり前にできていてほしいことで、大した差別化にはなりません。最近では、日用品やコンビニの商品も配達するなど、料理に限らない商品を配達することで差別化を試みる動きもありますが、これは他社にも広がっていくでしょう」