日本では近年「韓国型成長モデル」が大いに注目されているが、韓国経済の成長パターンは光と影を生み出した。足もとで景気減速下の韓国はどうなるのか。韓国大統領選を目前に控え、第1回目は、なぜ「経済民主化」と福祉の充実が求められているのかを明らかにする。

むこうやま・ひでひこ
中央大学法学研究課博士後期過程中退、ニューヨーク大学で修士号取得。 証券系経済研究所を経て、1992年さくら総合研究所入社し、現在日本総合研究所調査部上席主任研究員。専門はアジアのマクロ経済動向分析、韓国経済分析、アジアの経済統合、アジアの中小企業振興など。

 韓国で今年12月19日に実施される大統領選挙(2013年2月に新政権発足)は、保守系与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補と、革新系野党民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)候補の一騎打ちとなる。両候補者とも、従来の財閥グループ主導の成長が国民の生活向上に十分に寄与しなかった点を踏まえ、政策の力点に違いはあるものの、財閥に対する規制強化や中小企業の保護などを含む「経済民主化」の推進と福祉の充実をアピールしている。

 経済界は「経済民主化」に一定の理解を示しつつも、市場への行き過ぎた介入は経済の活力を損ねる恐れがあると警告している。今年に入っての景気の急速な悪化も、経済界の憂慮を大きくしている。韓国大統領選を目前に控え、これからの韓国経済はどうなるのかを2回にわたり検証する。

 第1回は、なぜ「経済民主化」と福祉の充実が求められているのかを明らかにし、次回では、韓国経済の今後の行方を展望することにしたい。

グローバル化と「韓国型
成長モデルが」生んだ光と影

 2000年代に入って形成された韓国経済の成長パターンは、①財閥グループによるグローバル事業展開、②輸出主導型の経済成長、③政府の積極的な経済外交などに特徴づけられる。韓国政府はFTA(自由貿易協定)網の拡大を通じて、企業のグローバルな事業展開を後押ししており、EU(欧州連合)とのFTAは 2011年7月1日に暫定発効し、今年3月15日には米国とのFTAが発効した。