財政政策検討本部は、積極財政への大転換の
エンジンとなり得るか

 そして、12月1日に開催された役員会では、「議論すべき課題」として以下の項目が掲げられた。

1 国債発行の意味すること(孫子の代にツケを残しているのか、返済不能になることはあるのか、国債とインフレの関係)
2 戦後のインフレの検証(多額の戦時国債発行が原因か、財産税は有効だったか、財政法が作られた背景)
3 貨幣と信用創造(貨幣とは何か、信用創造とは何か、日銀と国債の関係)
4 財政政策の機能(税は財源か、財政政策の限界、財政政策をコントロールする指標は何か)
5 過去の経済政策の検証(戦後の高度成長と所得倍増論、バブルと不良債権処理、バブル後の長期停滞の原因)
6 新しい資本主義に向けて(民間経済と公共政策、分配と成長、長期計画の必要性)

 ここには、大手メディアの主張にはない税の役割、財政の役割、貨幣観といった事項がしっかり入れられている。真に積極財政派であれば、議論するまでもない事項である。それらをあえて、しかも詳細に課題・論点として掲げて議論しようというのは、緊縮財政派をやり込めるのではなく、議論を通じて理解を深めてもらおう、あるいは積極財政に転じなくてもいいが、少なくとも積極財政というものを正しく理解してもらおうという姿勢の表れであると考えて良いだろう。

 今後財政政策検討本部において、外部専門家も招いてその意見を聞きつつ、議論が進められていくことになる。次の3つが、同本部が真に機能し、有益な提言を取りまとめられるかのメルクマールになるだろう。

(1) 活発ではあるが、胸襟を開いた前向きかつ本音の議論ができるか
(2) 外部専門家については自己や自己の所属する業界等の利益の増進を第一に考えるような者ではなく、わが国の経済財政の行く末を第一に考えることができる者を招くことができるか
(3) “Big Government is back. ”といった表現に象徴されるような世界的な積極財政、国の財政支出の拡大の動きを踏まえた議論ができるか

 そうした点がうまく転べば、財政政策検討本部は、まさに、積極財政への大転換のエンジンとなり得るだろう。西田本部長、そして、自民党内の積極財政派の若手を糾合し、活動してきた「日本の未来を考える勉強会」顧問であり、同本部の幹事長を務める城内実衆院議員らの差配、活躍に期待するところ大である。

 大手メディアにおかれては、同本部の活動に大いに注目し、単に「積極財政派」などと片付けることなく、丁寧な報道をお願いしたい。