あなたはこれまでにこのような経験をしたことはないだろうか――。

■相手がわかりやすいよう、丁寧に背景を説明していたつもりだったが、なぜか相手がイライラし始めた・・・。

■気合いを入れて20ページもある企画書を書いたのに、上司はそれをほとんど読んでくれなかった・・・。

■部下が提出してきた企画書は、自分のイメージとは全く別のものだった・・・。

日常のビジネスシーンには
多数の『落とし穴』が!

 上記はほんの一例にすぎない。しかし、日常的なビジネスシーンにはこのような“失敗”がつきもの。本人がイメージしていたものとは全く違う結果になってしまうことも少なくない。まさにビジネスの現場には実に多くの『落とし穴』が潜んでいるといえる。時にはその落とし穴を“自ら”掘っている場合もある。思い込みや曖昧なコミュニケーションなど、ちょっとしたボタンの掛け違いがその原因だったりするのだ。

 ではどうしたらいいのか――。そのために一番大切なことは、「目的を押さえる」こと。「何のために行なうのか?」、それをきちんと理解しておかなければならない。しかし残念ながら、多くのビジネスパーソンはそれがきちんとできていないことが多い。一番危険なのは、わかった“つもり”なのである。

 そこで今回は、「目的」の意味を履き違えて失敗した、ある食品メーカーのケースを見てみよう。

【失敗例】食品メーカーA社のケース
「何のためのアウトソース?」

 A社は、中堅の食品メーカーである。A社の経営陣は、生産性向上とコストダウンを旗印に、これまで以上に積極的にアウトソーシング(業務の外部化)を行なうことを決定した。会社の核となる強み以外は、どんどん外に出していこうという積極的なものである。

 こうした中、本社の管理本部長の清野は、「こうしたときこそ、スタッフ部門である我われが率先垂範しなければならない」と考えた。そして彼は部下の部長たちにその考え方を伝えるとともに、それを推進するための施策として「管理本部のそれぞれの部署について、アウトソーシング進展度合いを測定し、公開する」と告げたのである。