キャリアの大三角形を
つくるための「2つのコツ」

 コツは2つあります。1つ目は、それぞれの軸できちんと100分の1の存在になるということ。イギリスのマルコム・グラッドウェルという人が広めた「1万時間の法則」というものがあります。1万時間の練習、努力、勉強を行えば誰でもある技術をマスターできるという法則です。

 多少覚えが悪くても、不器用でも、1万時間の努力は裏切りません。例えば1日8時間、月に22日費やせば、およそ5年で1万時間に到達します。22歳で就職し、毎日8時間仕事に集中すれば、27歳の頃にはその技術をマスターしています。もし仕事の半分がルーティンワークだったとしても、4時間集中すれば32歳にはマスターできます。そして2歩目に軸足を移すのです。

 2つ目のコツは、3つの軸をどこに置くかです。1歩目は営業、経理、開発、製造、企画、広報、マーケティング、エンジニア、デザイン、なんでも構いません。重要なのは2歩目から。「私ももうこの技術はマスターしたな」と思った頃に、何かしら巡ってくるチャンスがあるものです。なければ異動願いを出すか転職するのもいいでしょう。

 3歩目はなるべく距離を取り、大きな三角形を作ることをイメージします。軸の距離が近いと面積が小さくなり、掛け算がきかなくなるからです。

 悪い例を挙げると、20代で経理、30代で財務、40代で関連会社の経理課長になるといったパターン。こういう人はゴロゴロいて、希少価値がほとんどない。3歩目で公教育に軸足を移した私がそうでしたが、1歩目と2歩目は同じ会社または近い業界でスキルをつけ、3歩目は全く違う世界に行くのもいいでしょう。

 例えば1歩目と2歩目で経理と財務を身につけたなら、3歩目はNGO(非政府組織)に行く。NGOは資金調達と経営管理が非常に重要ですから、経理財務のエキスパートならばスキルを存分に生かせます。

*藤原和博氏のインタビューは後編に続きます。