世界にもこのような指導があるかと言えば、それは違います。たとえばスペインだと、学校の中にスポーツの要素はありません。皆、学校の外にある地域のスポーツクラブで運動を楽しむのです。総合クラブなので、さまざまなスポーツが体験でき、教わる競技もあれば教える競技もある。基本的にはメンバーのお互いの立場は平等で、理不尽な上下関係が成り立ちにくい環境にあります。

 このように、スポーツは地域のクラブで行うことが海外では主流となっています。大人になってもクラブを利用し続けますが、会社での立場を持ち込むこともなく、社交の場として成立しているようです。

日本人のサッカー競技者は
ピラミッド型

なぜ日本人はスポーツを楽しめないのか?海外と比べた「異質さ」の原因

 我慢を優先する日本の部活動とは異なり、楽しむことを優先する海外の方が、必然的に生涯スポーツに出会う可能性が高い。日本のサッカーの構造で見ると、小学生のときに始めたサッカーを大人になっても継続しているのって、100人いたら1人くらい。つまり、99人が辞めているんですよね。

 そのほとんどが、高校卒業と同時に辞めてしまう。全国大会に出場するために、追い込んでやらされる。自分の判断でやっていなければ、どこかで燃え尽きてしまいますよね。自ら区切りをつけてしまうんです。一方、サッカー先進国のドイツに目を向けてみると、10歳のサッカー人口と40歳のサッカー人口がほぼ同じなんです。子どもの頃に出会ったスポーツを、そのまま生涯にわたって楽しめている。これは幸せなことではないでしょうか。

 サッカーのFIFAランキングを見てみると、ドイツをはじめ上位にランキングされる国は、国民の競技者比率が高いことがわかりました。上位国のほとんどが6%以上なんです。日本は3.8%しかありません。過去50年間のFIFAランキングを見てみると、競技者比率が3.8%の国がベストテンに入ったことはない。

 日本の競技力の向上という視点でも、生涯スポーツに出会い、継続できることが大切なん
です。そのためには、小学生のプレーヤーを増やし、女子やシニアといったカテゴリーの
環境を整える必要があるのです。