半導体市場が活況だ。国内でも大型の投資案件が続々と立ち上がっている。日の丸半導体の復活を目論む経済産業省は、台湾TSMCの工場誘致を実現にこぎつけたが、民間投資を追い風にさらなる支援策によって半導体産業の強靭化を狙う。特集『総予測2022』の本稿では、TSMC誘致にとどまらない経産省の次の一手に迫る。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
30年半導体市場は倍増の約100兆円!
TSMC誘致で日の丸半導体の逆襲なるか
「半導体にここまで世間の関心が集まったことはない」。半導体企業関係者は驚きをあらわにする。
2021年は、半導体不足が産業界を直撃した年になった。半導体需給の逼迫により、家電やゲーム、産業機器などのハードウエアが相次ぎ減産に追い込まれた。
とりわけ自動車産業へのダメージは甚大だ。自動車メーカー各社が大減産を迫られた結果、トヨタ自動車以外の6社が、22年3月期の売上高見通しを下方修正した。
すでに自動車メーカー各社は増産体制の構築に余念がないが、車載半導体の品薄緩和は22年下半期以降にずれ込むとみられている。
将来を見据えても、半導体需要は高まるばかりだ。これまでけん引役だったスマートフォンに代わり、5G(第5世代移動通信システム)インフラやデータセンター、電動車や自動運転車といったモビリティなど、デジタル社会の本格的な到来が需要を喚起する。
世界半導体市場統計では、21年の世界市場は前年比25%超の成長が見込まれている。22年も6014億ドルと21年6月時点の予想から上方修正し、過去最高を更新する見込みだ。
さらに、経済産業省の資料によれば、30年の世界の半導体出荷額は20年の2倍の約100兆円になるという。昨今の市場沸騰は、まだまだ序の口にすぎないのだ。
世界の半導体争奪戦が激化する中、凋落した日本の半導体産業を復活させるべく経産省が打った起死回生の一手が、ファウンドリー(半導体受託製造)世界最大手の台湾TSMCの国内誘致だ。
当初、実現には懐疑的な見方もあったが、国内では最先端となる半導体製造工場の誕生によって、日の丸半導体の“逆襲”がいよいよ始まろうとしている。
だが、経産省の目論見はTSMCの誘致にとどまらない。半導体産業の強靭化として、さらなる構想が持ち上がっているのだ。
経産省が繰り出す次の一手とは何だろうか。