日本企業や株式市場への影響も大きい米国経済はどこへ向かうのか。特集『総予測2022』の本稿では、経済・市場の分析や見通しに定評のある三井住友銀行の西岡純子(ニューヨーク駐在)チーフ・エコノミストが、2022年の米経済の行方を読み解く。
インフレと金融政策正常化が鍵
消費意欲旺盛な米経済の行方は?
2022年の米国経済を見通す上で鍵となるのは、インフレとFRB(米連邦準備理事会)の金融政策正常化の行方だ。
懸念が広がりつつある新型コロナウイルスの新たな変異体(オミクロン株)への不安は尽きないが、バイデン大統領をはじめ、再びロックダウンを行うことは否定している。
経済は、ウイルス関連の報道に打たれ強くなってきている印象だ。20年3月に国家非常事態が宣言された頃は、人々の不安と不満が鬱積した結果、大規模なデモにつながったり、構造的な人種差別にも飛び火したりするなど、社会問題に広く波及した。
今年に入り、ワクチン普及で事態は好転した。感染発生を前提に、その影響を可能な限り軽微に抑えようとする公衆衛生策が奏功した。これから承認されるだろう新型コロナの経口治療薬への期待も大きい。そうした期待を支えに、連邦政府から供給された一時所得が米国の消費の起爆材料となっている。
こうした基本的な背景を踏まえ、22年の米国の実質GDP(国内総生産)成長率は何%が見込めるのか。以降、予測値を実数で示すとともに、その内訳や想定シナリオ、金融政策正常化の流れの中で注視すべき「2つのポイント」について解説していく。