JR各社の業績が厳しいのに対し、私鉄系は今期黒字予想が相次ぐ。その一社、関西私鉄大手の阪急阪神ホールディングスは運賃に対する姿勢がJRなどと異なる。特集『総予測2022』の本稿では、同社のかじを長らく取ってきた角和夫・会長兼グループCEO(最高経営責任者)に鉄道会社の今後の見通しを聞いた。(ダイヤモンド編集部 松野友美)
コロナ禍前の100%には戻らないことを前提に
生産性の向上を加速させる
――2022年3月期に黒字転換を見込んでいます。日常利用が多い近郊鉄道の見通しは?
われわれよりもJRの新幹線や特急、航空会社の国際線の方が、新型コロナウイルス終息後の「戻り」を見通しにくく、経済的には大変だと思います。
近郊鉄道はコロナ禍前の100%には戻らないことを前提に、損益分岐点を下げる努力を続けていきます。
――短期的なコスト削減策として、他社では電車のシートの交換を先延ばしする例も聞きます。
そういう努力には敬意を表します。ただし、きちんと清掃できているとか、適度な周期で交換されているとかの要素って、ブランドを維持する上で非常に大事だと思う。だから、うちではやりません。
――では、どのような経営努力をしているのですか?
ワンマン運転を増やすとか、忘れ物センターの業務や駅の案内はDX(デジタルトランスフォーメーション)で対応するなど、いろいろな面で生産性を上げていくことは可能です。こうした対策は今まで以上に速度を上げていかなければいけない。
――通勤・通学の電車利用はコロナ禍でどう変わるとみていますか。
電車内でクラスターが起きるということは、あまり想定しにくい。かといって電車の本数を減らすと密の状態になる。だから、コロナが終息するまでは、ラッシュ時のダイヤを見直しする気はありません。
コロナが終息してラッシュ時間帯の混雑率が下がれば、当然見直します。
――通勤の時間帯によって運賃を上下させる「オフピーク定期券」を導入する予定はありますか?