BEVの目標を引き上げても
全方位戦略は堅持

 トヨタはこの会見と連動して欧州で35年に販売する新車を全てBEVなどのゼロエミッション車にすることも発表している。

 30年にBEVを世界で350万台販売する計画は、トヨタ連結世界販売1000万台のうち35%にすぎないという批判的な見方もあるが、350万台はベンツの世界販売台数と同等であり、国内ではスズキを超えるボリュームだ。

 BEVはあくまで「欧州、中国、米国、日本を中心に先行して販売していく」と環境対応で先行する市場で注力する方針であり、他の地域はHEVやPHEVなどを展開する考えは変えていない。世界のユーザーは各市場ごとの多様性が強く、国や地域でのエネルギー事情やインフラ対応も異なっている。ユーザーが求めるものに対応するためにも「トヨタ全方位戦略」の旗は降ろさないことを明確にした。

 また、豊田章男社長は「BEV化によって、(製造が容易になり自動車が)コモディテイー(普遍)化するとの見方もあったが、新開発BEVは走行性などでその意識が払拭(ふっしょく)された」とも語り、トヨタ次期BEV商品群に大きな期待を見せた。

 今回のBEV拡大戦略は、ある意味でトヨタのイメージ一新、ブランディング戦略でもあった。

 脱炭素の道筋は、世界各国の国策とも絡んで進んでいこうとしているが、環境対応は人類共通の命題として突き付けられている。「世界のトヨタ」が電動車をどう位置付け、30年から50年に向けてさらなる革新をどう進めていくか、注目していきたい。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)