なお、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、すでにチケット価格変動制を導入済みで、同様のレジャー施設は増えていく可能性がある。コロナ禍で傷んだ企業側としては、「来る人が減っている分、払える人にはしっかり払ってほしい」と言いたいのだろう。

 2022年に再開される見込みの「Go Toトラベル」でも、平日と休日に価格差をつける予定だ。

 まず、前回の割引率は旅行代金35%(1万4000円まで/1泊)+地域共通クーポン15%だった。今後再開予定の計画では、割引率30%(交通付き宿泊1万円/1泊、宿泊のみ7000円まで)と縮小。受け取れるクーポンも平日と休日で差をつけ、平日なら3000円だが、休日は1000円と、3分の1しかもらえない。

 黙っていても出かける人が多い休日よりも、平日に旅行に行った方がオトクですよとアナウンスすることで、まんべんなく観光客を呼ぼうという考えだろうが、そのもくろみはうまくいかないだろう。その理由は後ほど述べる。

金持ちはさらにトクをし、そうでない庶民は損をする?

 ダイナミック・プライシングを適正に実施するには、政府がお題目のように唱えるDX(デジタル・トランスフォーメーション)が必要になる。ビッグデータやAIの活用により、企業は独自にデータ分析を行って、「もうけが確保できる」価格を割り出す必要があるからだ。

 先のディズニーランドのような例では、「平日なんて簡単に休めない庶民が高い料金を払うのか」という論調が巻き起こりやすいが、ダイナミック・プライシングすべてがそうともいえない。

 例えば、スーパーマーケットで「雨の日は客足が減るので値引きが早くなる」なんていうのも、いわば天候を基準にした変動価格制だ。ビジネスホテルも、客が少なければ平日だろうが休日だろうが、価格を引き下げる。家電量販店で、売れ行きや競合店の価格によって商品の価格を変動させるのは、もはやおなじみだ。

 最近では、フードロス対策としても、コンビニやドラッグストアで賞味期限が迫った商品をアプリで通知し、値引きやポイント還元をするという実証実験も行われた。フレキシブルかつオンタイムで変動するオトク価格を知ることができるなら、庶民にもメリットがある。

 また、おトク価格には人を誘導できる引力もあるので、店がお客を呼びたいなら「この時間までに来店された方には、おつまみすべて100円に」という使い方も可能だ。同じ商品、同じサービス、同じ店でも、定価は変動する。それがスタンダードになってくると、購入する側は「どんな時が安くなるのか=モノが売れないのはどんな時か」といった、逆張り能力が必要になってくるかもしれない。