高田馬場でも新規開業、早くも競争時代に突入

 留学生が集まるJR山手線の高田馬場駅早稲田口周辺では、この1年以内に少なくとも3軒の「物産店」が開業した。

 12月でちょうど1周年を迎えたA物産店では、中国産以外にも、タイ産やベトナム産の調味料や菓子、加工食品が所狭しと並べられていた。取り扱いアイテム数はざっと1000を超えるという。陽気な店主は「僕たち中国人には、濃厚な味付けの加工食品や激辛の調味料は欠かせないんですよ」と話す。

 店主は留学生として訪日し、卒業すると日本企業に就職したものの、日本の企業文化になかなかなじめず、退職。「日本製品の輸出で稼いだ資金を元手に、コロナ禍の逆境で店を立ち上げた」と語る。

 30年ほど前、首都圏では物産店はまだまだ稀少で、干しエビやビーフンさえも手に入りにくかった。ちなみに筆者がその頃、初めて訪れた物産店は横浜中華街だったが、薄暗い店内で扱う商品は乾物ばかりといった具合だった。しかし、このA物産店の、日本のコンビニさながらの明るく清潔な店内は隔世の感がある。

 A物産店の数軒先にはB物産店があった。今年2月にオープンし、菓子、飲料、加工・冷凍食品を中心に扱う、いわば“典型的な物産店”である。価格訴求型の経営を意識しているようで、中国人の間で人気の「元気森林」というカロリーオフのドリンクが他店よりも80円も安く販売されていた。従業員も愛想がよく、ちょっとした質問にも親切に答えてくれた。

 一方、C物産店では、従業員が「物産店はあまりに増えすぎた」と嘆いていた。新興の「物産店業界」は早くも生き残りを懸けた競争状態に突入しているようだ。そのため、高田馬場駅界隈の物産店は、差別化を意識した経営が印象的だ。

 このC物産店は、店舗内に厨房をしつらえたのが大きな特徴だ。上海の小籠包や広東のチャーシューなど、作りたての名物料理をテイクアウトできるようになっており、コンビニのようなイートインスペースも設けた。また、看板は日本語でも表記され、日本人客の取り込みにも積極的になっていることがうかがえる。

 前出のA物産店の店主は「野菜の販売が伸びている」と言い、店舗のほぼ半分を野菜の販売スペースに費やしている。都心から八百屋さんが姿を消して久しいが、ここを“八百屋さん代わり”にして訪れる客は少なくないようだ。店頭にはドリアンやドラゴンフルーツなどの輸入果物も並び、果物には目がない中国人の関心を引いている。