黒澤明の完璧主義は、映画そのものだけでなく、大物役者や下っ端スタッフへの分け隔てない心配りにも発揮されていた。部下が休む時間も含めて、十分な仕事の時間が確保できるように配慮する。そうして最高のパフォーマンスをチームにもたらすことこそが真のマネジメントではないだろうか。

◇常に準備ができているか

 芝居の舞台や歌舞伎の公演では、主役が倒れると代役を立てる。そんなとき、無名の新人が代役として大抜擢されることがあるのだが、新人で代役に抜擢される理由をお分かりだろうか。

 それは、「その新人だけが、主役のセリフを全部覚えていたから」だ。その新人はチャンスに備えて、主役や自分が代役を務められそうなキャストのセリフを毎回全部覚えてきた。だからこそ、チャンスがきたときにすぐに代役を買って出ることができたのだ。

 そこまで準備ができるなら、役者としての鍛錬も積んでおり相応の実力もあるだろう。それだけの努力をしてきたという点で、その新人の大抜擢は偶然ではなく必然といえる。幸運の女神は日々努力し続ける人にはちゃんと微笑んでくれるのだ。

◆一流の人のユーモア
◇正念場の乗り切り方

 コピーライターのひすいこたろうは、あるとき「2週間で本を書く」という無茶振りな依頼を受けた。断りきれずに結局この仕事を受け、仕事場に毛布を持ち込んで執筆にとりかかった。そのときお茶のペットボトルをパソコンの横に常備したというが、その理由は何だったのか。

 答えは「お茶があるから“無茶”じゃない」というおまじないのためである。おやじギャグであっても、無茶な納期に間に合わせるという活力がわいてくればそれでいい。正念場こそユーモアで乗り切りたいものだ。

◇圧倒的な積み上げという自信

 とあるカフェでピカソがスケッチをしていた。それを見つけた婦人は言い値でよいからと自身のスケッチを描いてもらうことになった。ものの3分で描き上げたピカソが提示した金額は、なんと5000フラン(今の相場で約40万円)であった。あまりの高値に憤慨する婦人に、ピカソは何と返事をしただろうか。