課題は人事評価制度だ。時間ではなく成果を見る制度設計ができれば、働く場所や時間を厳しく管理する必要はない。しかし、部下の行動を管理することがマネジメントだと思っている管理職はいまだに多い。制度だけ新しくしても、評価する人がそのままでは何も変わらない。まずは、「サボり」の概念を刷新する必要がある。テレワーク中のサボりを監視するソリューションが出ているが、勤務時間中にパソコンの前にいなかったり、サウナに行っていたりしてサボっているように見えても、何かしら成果を出し、役に立っている人は決してサボっているとはいえないはずだ。

 よく、働きアリのうち勤勉に働いているのは全体の2割、普通に働くのが6割で、残りの2割はサボっているといわれる。しかし、アリの行列から着想を得た「渋滞学」の第一人者、東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授は、「サボっているように見えるアリも、新しい巣やエサを探す役割を担っている」と語っている

 サボりか、新たなエサ探しか。人によって大きく認識が分かれる働き方が、ワーケーションだろう。筆者は昨年、北海道の釧路・鶴居村でワーケーションをするグループに同行した。人口約2500人の鶴居村は、酪農・農業が盛んで、冬はタンチョウの飛来が多いことから観光地としての人気も高い。会社員を中心としたメンバーは、大型バイクやキャンピングカーを使って密を避けながらワーケーションを楽しんでいた。ワーケーションで得られた気づきや自治体側の受け入れ体制について書いてみたい。

釧路・鶴居村でのワーケーション
第一印象は「誘惑が多すぎる」

 ワーケーションのメリットとして、よく生産性とパフォーマンスの向上が挙げられる。しかし実際は、最初から思ったような進捗(しんちょく)は得られないだろう。美しい景色やその土地ならではのおいしい食べ物、誘惑が多すぎるのだ。

 ワーケーションをともにした子連れの夫婦は、「小さな子供と一緒だとどうしてもバケーションの面が強くなり、疲れて仕事が捗らない」と語った。しかも、道東エリアの一部は電波状況が安定しているとはいえない。3Gになることもあった。長時間集中力を切らしてはいけない仕事の場合、館内だけでも楽しめる旅館やホテルを選んだほうが良さそうだ。

 筆者が感じたワーケーションの意義は、仕事の進捗とは全く別のところにあった。