日本の道路は渋滞に満ちあふれている。渋滞の解消は、人間社会における重要な課題と言っても過言ではない。渋滞をなくす方法はないのだろうか?「アリの行列は渋滞しない」という事実に着想を得た渋滞解消法を提唱する「渋滞学」の第一人者で、2021年度のイグ・ノーベル賞を受賞した東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授に、『ルポ 日本のDX最前線』筆者の酒井真弓氏がインタビューする。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
※本稿は、酒井真弓著『ルポ 日本のDX最前線』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。
自動運転で適切な車間距離を保つ仕組みとは
酒井 西成教授が取り組む「渋滞学」とは、どのような学問なのでしょうか?
西成 渋滞が起こる原因を調査し、解消に導く学問です。渋滞というと、車の渋滞を思い浮かべる方が多いと思いますが、人の混雑から物流、在庫、工場の生産ラインなど、流動的なもの全てが研究対象になり得ます。
酒井 自動運転の研究開発もされているんですか。
西成 大手自動車メーカーと連携して取り組んでいます。自動運転は、組織の垣根を越えて考えるべき課題です。各社が違う規格で開発をしたら、全体の最適化は望めません。
酒井 自動運転では、どのようにして車間距離を制御するのでしょうか。
西成 電波を使って車両や歩行者を検知するミリ波レーダーという技術を活用します。目の前の車にミリ波レーダーを発し、返ってくる時間で車間距離を算出します。それに応じて、車間距離が詰まらないように速度調整をするわけです。
酒井 「アリの行列は渋滞しない」という事実に着想を得たのが、渋滞学のきっかけと伺っています。自動車メーカーの方にも、アリを用いて説明するんですか?