コロナ禍を契機にリモートワークが広がる中、ワーケーションが注目されています。ワーケーションは「ワーク=仕事」と「バケーション=休暇」を組み合わせた造語で、観光地など自宅以外の非日常の場所でリモートワークを行いつつ、休暇を楽しむ新たなワークスタイルを意味しています。
地方自治体では地方創生の切り札としてワーケーションを捉え、2019年に設立されたワーケーション自治体協議会には2021年6月現在、193自治体が参加しています。一方、株式会社クロス・マーケティングと山梨大学が2021年3月に行った調査(※1)では、直近1年間でテレワーク(リモートワーク)を経験した人は全体の39.6%に上りましたが、そのうちワーケーションを経験した人はわずか6.6%にすぎませんでした。
コロナ禍を通して在宅ワークが急速に市民権を得たのに対して、ワーケーションがなかなか広まっていかない原因の一つは、この新しい働き方に対する二つの「誤解」があるからです。
今回は、ワーケーションに関して多くの人が持っているであろう二つの誤解について紹介し、その誤解たる所以を説明することで、ワーケーションの真の姿を明らかにしてみたいと思います。
誤解(1)リモートワークを導入する場合
在宅ワークのみを認めれば十分である
ポスト・コロナの社会においては、オフィスワークにリモートワークを組み入れたハイブリッド型の働き方を多くの会社が導入するようになるでしょう。大手企業の中でもリクルートや日立製作所といった企業は、リモートワークの制限を廃したワークスタイルへの移行をすでに発表しています。
一方、リモートワークを制度化した企業であっても、オフィス外で仕事ができる場所については、指定されたコワーキングスペースと自宅以外は禁止など、何らかの制限を設けているケースがほとんどではないでしょうか。そして観光地で仕事が行われるワーケーションについては、制度的・心情的に今後も認められないと感じている人が特に多いと思います。