こうした競技、特に新競技では顕著なのですが、昔と違って選手に悲壮感があまりなく、選手たちがちゃんと楽しんでいるのは素晴らしいことです。また、アマチュアリズムに過度にこだわるのではなく、プロが入っても問題なく競技が成立しているのを見ても、オリンピックはどんどん変化しているのだなと感じます。
人機一体の「超人スポーツ」が
オリンピックの可能性を広げるか
そうした変化を踏まえ、今後のオリンピックには「eスポーツ」が徐々に競技として入ってくるのではないかとも言われています。eスポーツは、コンピューターゲーム(ビデオゲーム)対戦をスポーツ競技と捉える呼び方です。
この連載でも過去に書いたとおり、私自身は元々あまりゲームをやったことがなく、最近になってようやく少し楽しめるようになったような人間ですから、eスポーツと言われると「ただのゲームをスポーツと呼んでいいものか」と考えてしまうようなところがあります。ただ、今回競技に取り入れられたスケートボードやBMXなども、昔の概念からするとストリートの遊びのように捉えられてきたことを考えれば、スポーツの見方が時代とともに変わることは不思議ではありません。
eスポーツが面白いのは、人間が機械とタッグを組んで、ほかの人・機械の組み合わせと競技するようになる点です。
東京大学に、ロボット工学やコンピューター、AR/VR、AIなどにより人の感覚や知覚を拡張するとどうなるかという「人間拡張工学」を研究する、稲見昌彦教授という方がいます。その稲見教授が提唱しているのが、「人馬一体」ならぬ「人機一体」の超人が競技を繰り広げる「超人スポーツ」です。
スポーツというのは元来、楽しむべきもの。年齢によって視力や筋力が衰えても、機械の力で自分の能力を拡張することにより、若い人とともに同じスポーツを楽しめるということがあってもよいのではないかというところから、その研究をスタートした稲見教授は、2015年に超人スポーツ協会を設立しました。