19世紀、ナポレオン3世のパリ大改造と
万国博で誕生した建築巡り

当初は5本の大通りが集まっていたので「エトワール広場」と呼ばれた当初は5本の大通りが集まっていたので「エトワール広場」と呼ばれた

 2日目は、現代につながる近代都市パリがどうやって形作られたのか、建築を通じてその秘密に迫ります。現在のパリの町並みは、19世紀、ナポレオン3世の時代に行われた都市改造計画によって生まれた町の造りが、その礎になっています。凱旋門のあるシャルル・ド・ゴール広場から放射状に延びる大通りもそのときに拡張・整備されたもの。凱旋門の屋上テラスに上れば、整然とした町並みを眼下に眺めることができ、そのスケールに圧倒されることでしょう。19世紀後半には、万国博のために建てられたモニュメントがパリの町をさらに彩ります。エッフェル塔も1889年パリ万国博開催時に建設されました。

 また、セーヌ川を巡る遊覧船に乗船して船上から建築を見上げるのもおすすめ。エッフェル塔、アレクサンドル3世橋など、万国博に合わせて建てられた建築群を眺めながら、クルーズを楽しみます。ディナーは、1867年に渋沢栄一ら派遣団が滞在したホテル「グランド(現ル・グラン)」の「カフェ・ド・ラ・ペ」はいかがでしょう。オペラ座パレ・ガルニエの正面にある歴史建造物で、クラシックなディナータイムを味わうことができます

モンマルトルとパッシー地区で
アールヌーヴォー建築散歩

エクトル・ギマールのデザインが完全な形で残るメトロ「アベス駅」エクトル・ギマールのデザインが完全な形で残るメトロ「アベス駅」

 3日目は、パリの町に息づく建築を見ながら、町歩きを楽しみます。まず、ノスタルジックなパリの雰囲気が残るモンマルトルの丘へ。ビザンチン様式で造られた白亜のサクレ・クール聖堂はパリを代表する名所のひとつ。そのほか、アールヌーヴォー様式で建てられたサン・ジャン・レヴァンジェリスト教会も訪れるのもいいでしょう。パリで初めて鉄筋コンクリートで造られた教会で、中世の教会とは違った趣があります。

 移動には、パリ万国博(1900年)開催に合わせて開通した、メトロを利用しましょう。教会のすぐ近くにある「アベス駅」は、開通当時の形を残す駅。大きなガラス屋根と庇をもつ、アールヌーヴォー様式の入口をデザインしたのは、建築家エクトル・ギマール。パリ西部のパッシー地区には、彼が手がけたアパルトマンがいくつも残っています。その一部を観ながら建築散歩を楽しみましょう。

 ル・コルビュジエが設計し、世界遺産に登録されているラ・ロシュ館もパッシー地区にあります。装飾的な要素が多いアールヌーヴォー様式とは異なる、シンプルかつ機能的な造りに、ル・コルビュジエの美学を感じ取ることができます。午後は、2021年に開館した現代美術館「ブルス・ド・コメルス」へ。昔の商品取引所を利用したもので、安藤忠雄が改装の設計を担当したことで話題になっています。歴史遺産を守りながら、時代とともに進化を続けるパリの建築を巡る旅。「町全体が美術館」と称される、建築都市パリを実感することでしょう。