米中は一蓮托生の関係になっている

 米中が経済的な結びつきを強めているというのは柳井氏の言う通り紛れもない事実だ。互いに切っても切れないほど深い間柄になっている。

 しかし、だからと言って「対立していない」とも言い難い。むしろ、経済的結びつきが強いせいで、対立が深刻になっており「最悪の事態」が起きる可能性も高まっているといえる。

 一体どういうことかを説明する前に、世界のGDPの約4割を占める米中経済の現実を整理しよう。まず、中国の対米輸出は増加しており、対米黒字は過去最高を更新している。「脅威だ」「排除だ」と大騒ぎをしているわりに、アメリカ人の生活は「メイド・イン・チャイナ」によって支えられていて、「中国依存」に歯止めがかかっていないのだ。もちろん、逆も然りで中国にとっても米国は最大のビジネスパートナーとなっている。

 そこに加えて、両者は金融的な共依存も強まっている。昨年11月、米中経済・安全保障調査委員会(USCC)は、対中投資の急増に危機感を示している。

「中国人民銀行(中央銀行)の9月末時点データによると、海外投資家が保有する人民元建て株式と債券の総額は、米ドル換算で1兆ドル(約113兆円)を突破した」(日本経済新聞21年11月30日)

 これは、中国がJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなど外資系金融機関に全額出資子会社の設立を認めたことが追い風になっている。実際、米国の公的年金や大学財団の運用資金は、ベンチャーキャピタル経由で中国の未公開株に振り向けられているという。

 つまり、中国のバブルがはじければ、米国経済にもダメージが及ぶし、米国がコケれば中国も無傷ではない、という一蓮托生の関係になりつつあるのだ。そんな相互に依存する大国同士が、本気で対立してもロクなことにはならない。というか、相手を排除すればするほど、それが「ブーメラン」になって自国経済を弱らせる。