半導体メーカーの設備投資が空前の規模で続いている中、装置メーカーの東京エレクトロンも活況に沸いている。2021年に50%近い成長を遂げた半導体製造装置市場の勢いは22年も衰えないと断言する河合利樹・東京エレクトロン社長。本当に過剰供給の懸念はないのだろうか。強気発言の真意を聞いた。特集『戦略物資 半導体&EV電池』の#4では、河合社長のインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
デジタル化と脱炭素で半導体需要は爆発
「ビッグイヤーズ」が到来
――2021年はWFE(半導体前工程製造装置)市場が50%に迫る勢いで成長する見通しであるなど、半導体市場は絶好調です。
まさにデータ社会への移行が加速しているということです。モビリティやシティー、工場などあらゆる産業の“スマート化”が広がっていきますが、その実現には半導体が必要不可欠です。もはや、半導体は「産業のコメ」ではなく「社会のコメ」になっています。
デジタル化に加えて、脱炭素の潮流も追い風です。「グリーンbyデジタル」と「グリーンofデジタル」と呼びますが、ICT(情報通信技術)などデジタルの力で脱炭素を進めるとともに(グリーンbyデジタル)、デジタル自体も膨大なデータセンターの増加などを考えれば、省エネ化が必要です(グリーンofデジタル)。グリーンとデジタルの両立には、半導体の技術革新が欠かせない。
――今後も半導体のニーズは増え続けると。
そうです。これまで、半導体は「コンピューターセントリック」や「モバイルセントリック」の時代が続いてきました。すなわち、半導体の需要はパソコンやスマートフォンなど「モノ」が中心で、だからこそ新モデルの発売などによって半導体市場に波が生まれるという状況があったんです。
ところが、今後はこれが「データセントリック」になる。要するに、IoT(モノのインターネット)や5G(第5世代移動通信システム)、AIなどの次世代技術によるデータ社会への移行によって、モノだけではなく「コト」への半導体需要が広がるということです。
実際に、年率26%で世界のデータ通信量が増えていくという予測もある。こうなると、半導体市場はこれまでとは違う成長のフェーズに入ります。半導体の技術革新のための設備投資に加えて、「コト」という持続的な需要成長が見込まれます。だから、私は今後の半導体の潮流を「ビッグイヤーズ」と呼んでいるわけです。
よく聞かれるんですよ。「この半導体市場の好調はいつまで続くんですか」って。違いますよ。いま成長が始まったところなんですっていうのが私のメッセージですね。
――長期的な半導体需要の拡大はあるものの、一方で足元22年の半導体設備投資の動向をどう捉えていますか。また、ロジック半導体については台湾TSMCなどが非常に強気な投資計画を示して市場全体をけん引するとはいえ、メモリーについては昨年の設備投資の反動などで今年減速するという見方もありますが……。
決算発表(2月予定)の際にもお伝えしますが、少し解説しましょう。