世界的なマネーゲーム熱も
いよいよ終焉?

 近年、世界の金融市場では、「超低金利とカネ余りの環境が続く」との過度な楽観を根底に、積極的にリスクを取る投資家が増えた。特に、米国では失業保険の特例・加算措置によって一時的に所得が増えた個人投資家が、SNSで周囲の個人投資家の行動をまねてゲーム感覚で株を買う「マネーゲーム」の動きが鮮明化した。

 テスラの株価上昇は、その顕著な例だ。「ミームストック(SNS上で個人投資家の人気を得ている銘柄)」の代表格である米国のゲームストップ社は、最終損益が赤字にもかかわらず、1月11日の株価終値は130.30ドルで、20年末の7倍程度の水準にある。

 それ以外にも、GAFAM (Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)など成長期待の高いIT先端銘柄の株価は、かなり割高な水準に上昇した。価格が上昇したのは株式だけではない。信用格付けがBB格以下のジャンク級(低格付け)債券や不動産、ビットコインに代表される仮想通貨など、超低金利・流動性供給に支えられて価格水準が高く形成された資産は多い。

 世界的な物価上昇圧力の高まりを背景に、FRBが利上げと流動性吸収を急ぐ姿勢をより鮮明にすれば、米国をはじめ世界の国債流通利回り(金利)は上昇するだろう。無リスク資産である国債の流通利回りが上昇すれば、株など価格変動の不確実性が高い資産を手放す投資家は増える。

 その結果、売るから下がる、下がるから売る、という弱気心理が連鎖し、世界的に株などのリスク資産の価格は下落する可能性が高い。そうしたリスクに備え始める投資家はいるが、まだ少数だ。

 大多数の投資家は、金利上昇によって株価が下落するリスクを十分に織り込めていない。米国の金利上昇が本格化すれば、米国のIT先端銘柄を中心に株価は下落し、世界の金融市場全体でリスクオフが加速するだろう。その結果、中国など債務問題が深刻化する新興国の金融市場からは資金が流出し、世界経済の先行き懸念が高まる展開が予想される。