プロジェクトは観察から始まる

 私たちにとって、オーガニックファームのデザインをするのは初めての試みでした。でもどんなプロジェクトも共通して、まずは観察することから始まります。

 皆さんは「観察の手法」を習ったことがあるでしょうか。本質的なことなのに、意外と習っていないものです。前回の記事「理解力を飛躍的に上げる『たった四つの分析』の威力」で紹介した通り、私たち人類は数千年に及ぶ科学の歴史の中で、本質的な観察手法を磨いてきました。観察の本質はそこから学ぶことができます。

進化思考では、ティンバーゲンの方法を一歩前へ進め、解剖生理学と発生学を「解剖」として統合し、未来を考察するための「予測」の手法を加えた、「解剖」「系統」「生態」「予測」という四つの分析によって適応を観察する。(中略) そして大雑把すぎる言い方かもしれないが、あらゆる観察手法は、実はこの四種類しか存在しないのではないか、とすら私は考えている。(進化思考 P.208から)

山口県企業のパッケージがドイツで金賞!「進化思考」的ブランディングとはNOSIGNER作成

 これらの4種類の科学的な観察方法から、ブランディングを考えていきましょう。

 山口県を拠点とする秋川牧園は、国内有数の規模を誇るオーガニックファームです。

 1927年に初代・秋川房太郎氏が中国・大連で自らが理想とする「秋川農園」に端を発し、房太郎の息子である秋川実氏が1972年に創業しました。以来彼らは、鶏肉、卵、牛乳、野菜などの生産、加工、配送をワンストップで行い、安心・安全な食を追求し続けてきました。

 先に紹介した進化思考の四つの観察の軸に照らし合わせて、この事業を観察してみましょう。