2周目の往復

 まず変異として試してみたのは、オーガニックファームらしい色合いと紙の風合いを印刷で再現すること。ロゴデザインにおいては、創業者の挑戦への思いを込めた「房太郎グリーン」という新しいコーポレートカラーを提案し、そこにクラフト紙のような質感を足しました。

 しかし、もう一度適応的に見ると、まだ特別な存在感のパッケージとなるための課題を越えていませんでした。

3周目の往復

 彼らの農園のような実直な姿勢を伝えるすべはないものかと考えて、たとえば牧場の柵をデザインに配置してみたものを制作してみました。しかしこれだと、最初に守ろうとした大きな内容表示という意図と干渉し、伝えたいことが伝わらなくなってしまいます。

完成形が見えてくる

 適応を繰り返す中で見えてきた目的は、こんな方針でした。

・食の安全に徹底的にこだわることを示す。
・老舗オーガニックファームとしてのあたたかい存在感を示す。
・売り場でたくさんエリアを作りたくなる工夫。
・山口の企業という地元に根ざしつつ、世界でも通用するブランドの発信。
・それらの結果として、これまでのユーザーの共感を深め、さらに新しい共感者を増やす。

 これらを踏まえ、最終的には緑の山並みを配置することにしました。

山口県企業のパッケージがドイツで金賞!「進化思考」的ブランディングとはNOSIGNER作成
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 この山並みには二つの機能があります。パッケージに共通する山模様によって、棚の上に集まると山並みがつながる景色を作り出す工夫が施されています。山口県あたりに特有の、低くなだらかな山並みが店舗にイラストのように再現されるのです。こうして秋川牧園の商品はエリアとして存在感を示せるようになり、置き棚を拡大してくれる企業が増えました。これは「増殖」的なアイデアと言えるでしょう。