新型コロナウイルスの感染拡大で世界の債務は膨張した。供給制約や少子高齢化による人手不足でインフレ率が上昇しつつある今、債務の膨張と低金利を両立させることが困難になりつつある。それは、債務の持続可能性が担保されなくなること意味する。持続性維持のためには成長率向上が不可欠だが、そのための条件を日本経済は満たしているのだろうか。(クレディ・スイス証券株式会社 プライベート・バンキング チーフ・インベストメント・オフィサー・ジャパン〈日本最高投資責任者〉 松本聡一郎)
新型コロナウイルスの感染拡大が
もたらす変化の兆候
新型コロナウイルスのパンデミックは、あらゆる変化を加速させる触媒のような作用をもたらすだろう。クレディ・スイス・リサーチ・インスティテュートは、2020年12月に発行したレポート「持続するものは何か? COVID-19が示唆する長期的変化」の中で、このような趣旨の指摘をしていた。
レポートで指摘した注目すべき10のトレンドの中には、価値観(権威主義と民主主義)の対立と競争の激化、安定性優先でサプライチェーンを見直す動き「ニアショアリング」への取り組み、グローバル化が後退し多極主義が優勢になること、国家の役割が拡大し大きな政府を志向すること、格差(不平等)問題への取り組み、そしてインフレのテールリスクという項目があった。
1年が経過し、どのような変化の兆しが見えてきているのか。