銅相場は2022年も高止まり、史上最高値を更新する「2つの理由」Photo:PIXTA

2021年の銅相場5月に史上最高値を付け、10月に最高値に迫った。といっても1トン当たり9000~1万ドル台の幅の中での動きが中心だった。ドル高や新型コロナウイルス感染拡大で頭を抑えられつつも、世界経済の回復で下支えされた。22年も最高値を強弱の材料が交錯しながら最高値を付ける公算が大きい。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

2021年は5月と10月に
史上最高値を更新

 銅相場は、5月10日に1トン当たり1万747.50ドルの史上最高値を付けた後、やや下落して9000ドル台前半を中心に推移したが、10月15日には1万328.50ドルと最高値に迫った。その後、9000ドル台での動きが続いたが、2022年1月12日には1万72ドルまで上昇した。

 21年5月、10年ぶりに史上最高値を更新した背景には、各国でコロナ禍対策として打ち出された巨額の財政支出や非常に緩和的な金融政策の継続がインフレを招くとの観測があり、インフレに強い資産である商品(コモディティー)全般への投資意欲が高まったことがあった。コロナ禍からの経済正常化によって景気回復が見込まれ、銅需要が増加する期待もあった。

 特に電導性に優れる銅は、世界的に脱炭素化が進められる中で、EV(電気自動車)の普及や再生可能エネルギーの導入に伴う中長期的な需要増加への期待が高まりやすかった。加えて、産銅国のチリやペルーでの資源ナショナリズム的な動きが供給懸念材料として意識された。

 もっとも、上昇ペースが速すぎた感は否めず、その後、銅相場は下落に転じた。まず、最大消費国の中国の需要が減速した。中国の銅輸入は20年夏場に盛り上がった後、21年夏から秋にかけては低調な推移となった。また、中国政府は、政策として、インフレ警戒のスタンスから商品価格抑制方針を打ち出し、国家備蓄放出などを行った。

 一方、昨春にはドル安が銅などドル建てコモディティーの相場押し上げ要因になっていたが、6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で想定利上げ時期の前倒しが示唆され、7月のFOMC議事要旨で量的緩和策縮小の年内実施方針が判明する中、急速にドル高が進み、銅相場の抑制要因になった。