「僕が残したものって、何でしょうね。結果以外に何かあるかな。プロになる道を作ったのも、体操にはまだまだ可能性があると示せたのも、残したものとは違う。結果を残した中で体操だけでなく他の競技の選手からもリスペクトされるようになったのも、うれしいけどちょっと違う。まだピンと来ていない、というのがありますね」

 言うまでもなく、世界中から称賛される結果を残した。ロンドン、リオデジャネイロ両五輪の個人総合で、44年ぶり4人目となる連覇を果たした。五輪イヤー以外に毎年開催される世界選手権を含めた、個人総合での連覇は前人未到の「8」に達した。

 得意種目を持つスペシャリストではなく、全6種目でハイレベルな演技を志向した。一転して2017年以降は、長く体にかけ続けてきた負荷が故障禍に変わり、個人総合の連覇もストップ。母国開催の東京五輪も種目別の鉄棒に絞らざるを得なくなった。

「いいところばかりを知り過ぎていたので、どん底へ落ちてからはい上がる力というものも、これから体操を伝えていく立場として知らなければいけなかった。栄光だけでなく挫折も経験できたのは、本当に貴重な経験だったという気持ちが強いですね」

 演技途中で落下した東京五輪の予選敗退から、必死に気持ちを奮い立たせて臨んだ世界選手権を自画自賛するほどの完璧な着地で締めた。全身を貫いた万感の思いに、画竜点睛へのこだわり、夢中になれるものを見つける大切さ、ただその道一本やりのばかにはなるな、という三つのメッセージを添えて、内村は体操に関わり続けていく。