国税庁の事務業務センター化で
税務調査も効率アップ?

 さらに、国税庁では、2021(令和3)年7月から「内部事務のセンター化」を実施している。相談や問い合わせ、調査・徴収などの外務事務と、申告書の入力処理、申告内容等についての照会文書の発送などの内部事務を分け、事務業務の効率化を図るためだ。

 税務事務のセンター化に伴い、行政指導の責任者が国税局長となる場合があり、国税局長名で申告内容に関するお尋ねが届くことがある。税務調査の通知と勘違いして慌てる人もいるが、行政指導はあくまで納税者の自発的な見直しを要請するものだ。

 ただし、行政指導を侮ってはいけない。自主的に修正申告書を提出しても、延滞税を納付しなければならない場合がある。また、税務調査のように過少申告加算税は課されないものの、当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%賦課される。

 税務調査は「調査」であることが明らかに伝えられ、「調査通知」→「事前通知」→「実地調査」という手順で行われる。税務代理を委任された税理士にも通知される。2013(平成25)年1月から国税通則法の改正により、行政指導と税務調査の違いが明確化された。

 コロナ禍で税務調査も動きが封じられるだろうと高をくくってはいけない。確かに、令和2事務年度〔2020(令和2)年7月~2021(令和3)年6月〕は、相続税も贈与税も実地件数は前年度比約50%減となった。しかし、贈与税の実地調査1件当たり追徴税額は201万円、対前年度比86.7%である。

 贈与税の非違(申告漏れなどの違法行為)件数のうち無申告は82.2%。贈与税の無申告や申告漏れは、相続税申告であぶり出されるケースが多い。しかも、贈与税の財産別非違件数は現金・預貯金等がトップで74.2%、次いで有価証券が10.0%。

 今後、国税庁のDX化がさらに進み、電話などによる簡易な調査やウェブ会議システムなどを利用したリモート調査も増えるとみられる。マイナンバーひも付けによる金融機関照会がスムーズになれば、今後は調査件数も増え、成果も上がるかもしれない。

 近頃は、金融商品のネット取引も増加している。富裕層でなくても、相続発生の際、被相続人のパスワードを知らなくて大変な思いをする相続人も少なくはない。無申告や申告漏れにならないよう、十分注意したい。