証券会社の顧客マイナンバー取得が
ついに法制化

 さらに注意すべきは、国税庁による「税務行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)」が、思いのほか急速に進捗していることである。菅前首相肝いりのデジタル化は岸田首相へのトップ交代で行方が注目されたが、コロナ禍が推進を後押ししたようだ。

 2019(令和元)年度税制改正を受け、国税通則法等が改正され、証券会社が証券保管振替機構(ほふり)から顧客マイナンバーを取得できるようになった。2021(令和3)年末がマイナンバー登録の猶予期限になっているが、いまだに未登録者が多いためだ。2022(令和4)年から取得可能となった。

 もちろん、この背景には税務行政上の都合がある。国税・地方税の税務調査でマイナンバーが付された証券口座情報を効率的に利用できるよう所要の措置を講ずるというのが目的だ。

 証券会社は税務当局にマイナンバー付き支払調書を提出し、税務当局は証券会社にマイナンバー付きで加入者情報を照会する。加入者情報をマイナンバーにより検索可能な状態で管理する証券会社は、速やかに税務当局からの照会に応じられる仕組みだ。

 2022(令和4)年1月から本格稼働の『pipitLINQ(R)(ピピットリンク)』は、株式会社NTTデータが提供する行政機関から金融機関への預貯金照会業務デジタルサービスである。すでに200余の行政機関、40余の金融機関が導入している。

 また、生命保険契約照会制度も、2021(令和3)年7月からすでに開始されている。こちらは、死亡、認知判断能力の低下、災害で行方不明となった人の生命保険契約の有無を家族などが照会できる制度だが、デジタル化が進んでいる一つの証しだ。

 いずれ早晩、銀行口座や生命保険もマイナンバーでひも付けされ、国税局や税務署が照会できる時代は来るだろう。そうなれば、税務調査の効率化・迅速化は格段に進む。