ユーグレナをベースに起業するにあたって、出雲氏は当時勤めていた東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)を辞めた。両親は大反対したが、本人は不安を覚えなかったという。

「もちろん周囲からは“やめたほうがいい”と言われました。けれど今は1円あれば会社を作れる時代、リスクなんてありません。挑戦し続けていれば応援してくれる人は現れます。逆に動き出さなければ誰も応援してくれません。仲間や協力者がいれば事業は起こせるのです」

情報科学と生命科学の
進化のスピードが速すぎる

 創業時に参加したメンバーは、今では大きな成果を手にしている。出雲氏以下メンバーが信じていたのは、バイオテクノロジーの可能性と進化のスピードである。

「ヒトの遺伝子を研究するヒトゲノム計画が1990年にスタートし、2003年にヒトのゲノム解読の完了が宣言された時は、30億の塩基配列を調べるのに、13年を超える歳月と3000億円以上の費用がかかりました。

 今は、唾液があれば、当社のサービスでも、わずか3~4週間、3万円程度で遺伝子を調べられます。そのくらいIT(情報科学)とバイオテクノロジー(生命科学)の分野では、かつてないほどのスピードで技術革新が進んでいる。この両分野は等比級数的に進化し、その進化のスピードが速すぎるために、人間の脳が理解できる範囲を超えているほどなのです」

 ユーグレナ社の成長は、そのバイオテクノロジーの進化のスピードに乗っている。創業時に“やめたほうがいい”と助言した人々は、その進化の速度を想像できなかったのだ。