自分を助けられるのは自分しかいない
──上司に怒られすぎて心を病んでしまう人もいるかと思います。「怒られているうちが花」という言葉もありますが、上司からの叱責やアドバイスは、どのように受けとめたら良いでしょうか。
バク:まず前提として、職場関係で上司に怒られてメンタルを病んだとして、それで「怒られている人が悪い」っていうパターンはほとんどないと思うんです。
わびさんの本にも書いてありましたが、部下が効率よく働けるようにするのが上司の仕事。反射的に、感情的にわっと怒ってくるやり方って、全然建設的じゃないんですよね。「怒る」と「叱る」を混同している時点で、その人の言うことは聞かなくていいと思います。
感情を乗せずに、「君がやったミスはこういうもので、連発するとこういう被害が起こる可能性がある。それはわかる?」というように、具体的に指摘する。こういうやり方は「叱る」だし、それは聞く価値があるんですよ。
そこまで冷静に、相手の理解度を確認しながら指摘するには、自分が誰よりも全体像を把握しておく必要がありますから。
わび:私もまったく同意見ですね。行動につながるような具体的な方法が出てくるのなら、それは聞いてもいいけれど、感情的な表現しかできてないなら、受け流していい。
私は嵐の中4km泳いだり、雪の中100km歩いたり、山の中に1ヵ月近く籠ったり、自衛隊でいろんな経験を積んできました。過酷な状況を何度も乗り越えてきましたが、パワハラで簡単にぶっ壊れました。他人からの理不尽な攻撃などでメンタルをやられそうになったら、「心が折れる前に逃げる」が正解だと思います。
バク:うんうん。心が折れる瞬間って、いつやってくるか本当にわからないですからね。
よく「〇〇さんは同じような状況でも大丈夫だったよ」と根性論でなんとかしようとする人がいますが、人それぞれ置かれた環境がちがうので、まったく同じ出来事に遭遇しても、みんなに同じ症状が現れるとはかぎらないんですよ。
他人が我慢しているからといって、自分も我慢しないといけないというのは間違いです。
この記事を読んでくださっている読者の方には、他人と比較して落ち込んだり、自分と同じ環境ではない他人と自分を同じ目線で見たりするのはやめましょう、とお伝えしたいですね。しんどいことから逃げることは恥ずかしいことでもなんでもなく、立派な防衛手段のひとつですから。
わび:私もパワハラで倒れる前までは、「いつか、きっと誰かが助けてくれる」と、自分で逃げることをせずに、誰かが助けてくれるんじゃないかと希望を抱き続けていました。でも、結局誰も助けてくれなかったんですよね。
激務とパワハラに悩まされ、私が弱っていくにつれて、徐々に周りから人がいなくなっていきました。
もちろん、励ましてくれる人もいて本当にありがたかったんですが、やっぱりメンタルのどん底から這い上がるには、自分で動かないとどうにもなりません。
私が今、毎日を幸せに過ごせているのは、思い切って環境を変えたからでした。他人を救ってくれる神様みたいな人なんて、いないと思ったほうがいい。自分の武器をしっかり磨いて、いざというときにいつでも逃げられる準備をしておく。
自分を助けられるのは、自分の人生を変えられるのは、結局自分だけなんですよね。