新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、感染者のなかでも特に感染を拡げる「スーパースプレッダー」の存在が知られている。こうした患者は、体内でのウイルスコピー数(ウイルスの量)が多く、しかもウイルスを外に排出する期間が長いので、知らず知らずのうちに感染拡大源になってしまう。
東京医科歯科大学の研究グループは、スーパースプレッダーの特徴を探るため、2020年3月~21年6月に同大学病院に入院したCOVID-19患者のうち、リアルタイムPCR検査を1回以上実施した379人の病歴とウイルスコピー数との関係を調べた。
対象者の年齢の中央値は59歳で、女性が3割を占めた。またおよそ6割の人が基礎疾患を持ち、三つ以上の基礎疾患が重複している人は2割だった。基礎疾患は、高血圧146人(38.5%)、糖尿病82人(21.6%)などで、がんや関節リウマチ、心筋梗塞などの心血管疾患、脳梗塞の既往がある人も含まれていた。また、本研究では1人を除く全ての患者が「ワクチン未接種」であった。
年齢や性別、喫煙歴などの影響を調整して解析した結果、基礎疾患を三つ以上持つ患者のウイルスコピー数は、基礎疾患がない患者より87.1倍高かった。このほか、関節リウマチ患者では同じく1659.6倍、脳梗塞患者は同234.4倍、糖尿病患者は同17.8倍だった。
基礎疾患が重なると免疫機能に異常を来す可能性があるほか、疾患によっては免疫を抑える薬を使う。このため、自前の免疫応答だけではウイルス排除に手間取り、第三者が感染するに足るウイルスを吐き出す期間が長くなるわけだ。基礎疾患がある人ほど、ワクチン接種で免疫ブースターをかける意味はここにもある。
本研究は入院患者が対象だが、軽症で自宅療養中、あるいは濃厚接触者として待機中でも基礎疾患がある場合は、人一倍、慎重に行動したほうがよさそうだ。感染を拡げないためのマスク着用、手指消毒、黙食を徹底しよう。高齢者など重症化リスクがある人には近づかない配慮も必要だ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)