帝京大学ラグビー部や
東洋大学アイスホッケー部が蘇った理由

真剣勝負を“楽しむ”ことは本当にNG?学生スポーツが「笑顔作戦」で甦る理由

 たとえば、帝京大学ラグビー部監督の岩出雅之監督。前人未到の大学9連覇を達成した名将ですね。今年は4年ぶりに優勝して、10度目の大学日本一となりました。しかし、最初から結果を出したわけではありません。監督自身も日本体育大学で選手として日本一を経験、就任当初は気合と根性を前面に押し出したラグビーを展開していたようです。

 その後、私の考えも参考にしてくださり、チームの改革を進められたようです。「非認知脳」や「ご機嫌」の重要性を監督がチームに伝え、選手個々がライフスキルを取り入れるようになりました。トップダウンで詰め込むのではなく、主体性をもって自らが学ぶように環境を整えていたようです。

 練習を見学にいくと、Aチームだけでなくすべての選手が一生懸命を楽しんでいるシーンが印象的でした。施設内にはゴミが1つも落ちていませんし、心を整えて気分良くこのチームで、1人ひとりがするべきことを果たしている姿勢が見られます。

 また、東洋大学アイスホッケー部もそうです。数年前は暴行事件から活動を自粛するなど、混乱の時期がありましたが、元日本代表監督の鈴木貴人さんが監督に就任し、ライフスキルを取り入れることで少しずつ変わっていきました。

 最初は、私のこういった心理学の話はまったく選手に響きませんでした。皆、高校時代は気合いと根性で競技を続けており、それで結果を出してきた選手ばかりですから。ですが、中には感度の高い選手がいるんですよね。そんな彼らが少しずつ反応してくれて。私がチームに携わって5年目の年に、インカレで優勝。昨年度はインカレ2連覇、13年ぶりの3冠(春トーナメント・秋リーグ戦・冬インカレ)も達成しました。

 主将やジュニアの日本代表だった選手たちが非常に感度が高くて、一気にチーム内に浸透した印象です。以前でしたら「何やってんだ」と、選手同士が練習中に罵りあっていたり、手を抜いたりすることもありましたが、「今を大切にしよう」「機嫌良くやろう」と、量を求めつつも全員が質を追求するようになりました。